2001 Fiscal Year Annual Research Report
トロンビンレセプター特異的33kDaリン酸化酵素の構造・活性相関の解析
Project/Area Number |
13680711
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
井戸 正流 三重大学, 医学部・附属病院, 助教授 (90167263)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 宏治 三重大学, 医学部, 教授 (70077808)
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Keywords | トロンビンレセプター / セリン・スレオニンキナーゼ / 血小板 / μ-calpain |
Research Abstract |
トロンビンは止血血栓機序の主要なプロテアーゼとして、フィブリノゲン、第V、VIII因子等の血液凝固因子を活性化するとともに、血小板の最も重要な活性化因子である。トロンビンレセプターはこれまで3種類(PAR1、PAR3、PAR4)同定されているが、ヒト血小板ではPAR1が最も重要なトロンビンレセプターと考えられている。PAR1は7回膜貫通構造をもつG蛋白共役型受容体の一つで、PAR1のC末端側の細胞内ドメインはリン酸化されると、G蛋白との相互作用が阻害され、トロンビンに対する不応化が誘導されると考えられている。しかし、ヒト血小板ではこの部位を特異的にリン酸化する酵素は明らかではない。我々は、血小板におけるPAR1の細胞内ドメインを特異的にリン酸化する酵素を調べるために、PAR1の細胞内ドメインをPCR法により増幅し、大腸菌にグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白として発現させ、この融合蛋白をゲル内リン酸化法のin vitroの基質として用いて検討したところ、血小板内にトロンビン刺激により新たに活性化される33kDaリン酸化酵素を検出した。この33kDaリン酸化酵素はPAR1の細胞内ドメインに結合し、そこに存在するセリン及びスレオニン残基をリン酸化したが、同じ7回膜貫通構造を持つβアドレナリンレセプターやPAR4の細胞内ドメインはリン酸化しないことから、PAR1に特異的な細胞内ドメインリン酸化酵素と考えられた。また、この33kDaリン酸化酵素の活性化過程では細胞内Ca^<2+>濃度の上昇が必須であった。他方、PAR1のC末端側の細胞内ドメインと結合する蛋白を2-hybrid法を用いて検索したところ、血小板中に豊富に存在するCa^<2+>依存性システインプロテアーゼであるμ-calpainがこのドメインと結合することが明らかになった。μ-calpainと33-kDaリン酸化酵素がそれぞれPAR1細胞内ドメインのどの部位に結合するかを明らかにするために、グルタチオンセファロースと結合させたPAR-1細胞内ドメイン欠失変異体のGST融合蛋白を、トロンビン刺激ヒト血小板抽出液と混合し、GST融合蛋白と結合した33kDaリン酸化酵素とμ-calpainをゲル内リン酸化法及びμ-calpain large subunitにたいする抗体を用いたWestern blotting法で検出した。その結果、μ-calpainと33-kDaリン酸化酵素がPAR-1細胞内ドメインの細胞膜に近いP368〜E390に結合する可能性が示唆された。μ-calpainが33-kDaリン酸化酵素の活性化に関与する可能性が高いと推定される。
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