Research Abstract |
本年度は,GTE,GS,DXBのグアニジン(GdnHCl)変性について,蛍光分析,遠紫外CDスペクトル分析による測定を行い,GdnHClによる高次構造の変化を見ることで,ドメイン間相互作用が構造の安定性に及ぼす影響の解析を行った.GSドメインの機能であるSucrose分解活性は,GS,GTF共に1.5M GdnHClで完全に失われた.一方,DXBドメインの機能であるデキストラン結合能は,DXB,GTF共に1.5M GdnHClではほとんど結合力の低下は見られなかったが3M GdnHClで完全に結合力を失った.この結果より,酵素の機能からみたGdnHCl変性に対する安定性は独立であると考えられる.二次構造を反映する遠紫外CDスペクトルにおけるGS,GTF,CSとDXBの合成スペクトル(GS+DXB)の222nmの極値(αヘリックスに由来),DXBの227nmの極値(β構造と不規則構造に由来)に及ぼすGdnHCl濃度の影響を示している.GTFとGS+DXBのスペクトルはよく一致することから,GTFは2つのドメインが独立に二次構造を形成していると考えられる[1].また,全ての蛋白質においてGdnHCl高濃度領域で極値が消失し二次構造が崩壊していることが確認できた.各蛋白質における変性曲線の中点のGdnHCl濃度は,GS,DXB,GTFでそれぞれ,1.4M,1.6M,1.5Mであった.また,GdnHCl濃度上昇に伴うCDスペクトルの変化は,GS+DXBとGTFのスペクトルの形がGdnHClのどの濃度においてもほぼ一致することより,GdnHCl濃度上昇によってGTFの2つのドメインの二次構造は独立に崩壊すると考えられる.蛋白質分子内の芳香族側鎖の環境を反映する蛍光強度に及ぼすGdnHCl濃度の影響を示している.全ての蛋白質でGdnHCl濃度の上昇に伴い蛍光強度が低下することから,芳香族側鎖がより親水環境に変化したことが示唆される.各蛋白質における変性曲線の中点のGdnHCl濃度は,GS,DXB,GTFでそれぞれ,1.3M,1.6M,1.8Mであった.これより,GS,DXBの単独ドメインに比べるとGTFの方がGdnHClに対して三次構造が安定であることが示唆される. 以上の分光学的解析の結果より,GdnHClによる二次構造の崩壊はGS,DXB,GTFでほとんど差は無く,三次構造はGS,DXB,GTFの順で変化することが示唆され,GTFには三次構造を安定化するドメイン間相互作用が働いていると考えられる.
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