2002 Fiscal Year Annual Research Report
染色体複製開始の制御におけるInitiator Titration機構の役割
Project/Area Number |
13680761
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小川 徹 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (80109256)
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Keywords | DNA複製 / DnaA / oriC / 複製開始 / datA / IHF |
Research Abstract |
大腸菌ゲノム上に存在するdatA領域は、複製開始タンパク質DnaAを多量に結合することにより遊離DnaAの濃度を低下させ、過剰な複製開始を抑制する事をこれまでに明らかにしてきた。このような複製制御の機能は他のDnaA結合部位には見られず、datAに固有と考えられる。本研究ではこのdatA固有の多量DnaA結合の分子機構を解析し以下の結果を得た。 1.datAへのDnaA結合量の測定 ビアコアを用いて表面プラズモン共鳴を測定し、datAおよびoriCとDnaAの結合を解析した。結合量に顕著な差は見られなかったが、DnaAはdatAよりもoriCに対する親和性が強く、これは解離しにくいためであることが判明した。 2.IHFタンパク質のdatAへの結合 datA内の2番目と3番目のDnaA認識配列(DnaA box)の間にIHFタンパク質が結合する事を見出した。さらにこの結合によりDnaAの結合量が著しく上昇する事がビアコアによる実験から判明した。oriCもIHF結合能を有するにもかかわらず、IHF結合によるDnaA結合量の上昇は認められなかった。以上の結果からIHFによるDnaA結合の促進効果はdatAに固有であり、このことがdatAが複製制御能を有する原因であると示唆された。 3.datA変異株の作成と解析 染色体上のdatA内のIHF結合部位に変異を導入した株はdatA欠失株と同様の表現形を示したことから、実際にIHFが細胞内で開始制御に関与することが明らかとなった。また他の部位に変異を導入した株の解析結果と併せて、DnaA boxへの秩序正しい少量のDnaA分子の結合が引き金となって3次元構造の変化を伴いながら多量のDnaA分子が結合するというモデルが示唆された。
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