2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13680801
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
千葉 和義 お茶の水女子大学, 理学部, 助教授 (70222130)
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Keywords | pH / 細胞周期 / 幻数分裂 / 中期停止 / 受精 |
Research Abstract |
これまでヒトデ卵母細胞の減数分裂は、1-メチルアデニン(1-MA)の刺激によって、第1分裂前期から第2分裂終期まで休止なしに進行すると考えられていた。しかし本年度、本研究では、卵母細胞は第1減数分裂中期でいったん休止(1〜3時間)し、卵巣内から体外(海水中)に放卵されると減数分裂が再開されることを明らかにした。さらに、MAPキナーゼ活性によって中期休止が起こり、放卵後の細胞内pH(pHi)上昇によって休止が解除されることも見出した。確かに、実験的に単離した卵母細胞を1-MAを含んだ海水で処理すれば、休止しない。しかし自然状態の卵母細胞は、卵巣内で1-MA刺激されており、中期休止が起こっていたのだ。すでに金谷らが1-MAを発見してから30年以上も経っているが、ヒトデ体内で"本当に起こっていたこと"が見過ごされていたことに驚きを感じている。この中期休止は、正常発生を保証する受精タイミング補正装置として役立っている。卵巣内で一斉にGVBDした卵母細胞は、速やかに海水中に放卵されたならば、受精最適時(第1極体放出前)に精子と出会える。しかし実際には放卵が完了するまでに2〜3時間も要するので、中期休止がなければ、多くの卵は減数分裂を終了してから、ようやく精子に出会うことができる。そのような時期に受精すると、多精となって発生が異常になってしまうのだ。したがって本研究は、正常発生の基盤となる分子機構を明らかにするものであり、発生生物学にとって意義深いものであると考えている。昨年度の研究も合わせて考えれば、ヒトデ卵母細胞では、ホルモンである1-メチルアデニン→1-メチルアデニンレセプター→GTP結合タンパク質→PI3キナーゼ→Na+/H+アンチポーター→(放卵)→細胞内pH上昇→サイクリンB分解→第一極体放出、の情報伝達系が明らかになった。
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