2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13680804
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中川 真一 理化学研究所, 高次構造形成研究グループ, 研究員 (50324679)
|
Keywords | 網膜 / 幹細胞 / 分化 / 層構造 / 増殖 / Wnt / Ciliary margin |
Research Abstract |
我々は、脊椎動物の中枢神経系に見られる層構造の形成が、どのような分子メカニズムによって制御されているかについて、特に網膜に注目して研究を行っている。昨年度までの研究において、培養条件下で網膜の層形成を阻害する、2種類のモノクローナル抗体を同定していた。それらの抗体が認識する抗原を免疫沈降して精製し、アミノ酸配列を決定したところ、一つはミトコンドリアのタンパク質、もう一つはN-CAMを認識していることが分かった。前者に関しては、抗体がミトコンドリアのタンパク質に交叉反応し、本来の目的以外の分子が精製されてきたと考えられる。後者の分子に関しては、神経系の発生について既に多くの研究がなされており、新規分子の同定を目的としていた当初の実験方針をいったん中止することにした。 未分化な網膜を形成する前駆細胞はいったん単細胞にバラバラにしても、培養条件下で再集合して組織構造を作ることが出来る。しかしながら、その再集合組織の内部にはロゼットと呼ばれる構造が作られてしまい、正しい層構造は形成されない。すなわち、網膜の細胞は単独では層形成を行うことが出来ず、外からの因子が加わることで初めて正常な層構造が作られると考えられる。そこで、正常な層形成に必要な因子を同定するために、網膜の様々な領域の組織片を取ってきて、単細胞にばらした網膜の前駆細胞と共培養した。その結果、網膜のマージン領域が、再集合組織におけるロゼットの形成を抑制することが分かった。さらに、この領域で発現しているシグナル分子Wnt-2bがマージン領域と同様の活性を持ち、このタンパク質の存在下でバラバラにした細胞から正常な層構造を持った網膜が再生することを見いだした。今後はWnt-2bが細胞レベルでどのような変化を起こしているかに注目して研究を続けてゆく予定である。
|
-
[Publications] Kubo, F., Takeichi, M., Nakagawa, S.: "Wnt-2b controls retinal cell differentiation at the ciliary marginal zone"Development. 130. 587-598 (2003)