2002 Fiscal Year Annual Research Report
神経興奮伝播と単一細胞活動の同時記録によるシナプス可塑性調節機構の解析
Project/Area Number |
13680866
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Research Institution | Fukui University |
Principal Investigator |
村瀬 一之 福井大学, 工学部, 教授 (40174289)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅井 竜哉 福井大学, 工学部, 講師 (60291374)
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Keywords | 痛覚 / 光学的電位計測 / 脊髄 / シナプス前修飾 |
Research Abstract |
皮膚感覚などの体性感覚情報は脊髄後負で処理され視床をへて大脳に投射される。また、脊髄に終末する各種の下行性線維がそれを調節する。我々は脊髄切片後角の神経活動を光学的にイメージングし、体性感覚の情報処理に重要な神経可塑性と緩徐応答を解析してきた。その過程で、入力線維終末のシナプス伝達が長期増強されるか長期抑圧されるのかは抑制性介在細胞が調節している可能性が明らかになった。しかし、現有のイメージング装置では細胞群全体の活動しか記録できず、単一細胞レベルの現象との対応については確証が得られない。 本研究では、神経活動のイメージングと単一細胞内記録を同時に行う計測システムを構築し、介在細胞が可塑性発現に果たす役割を調べる。具体的には、一次求心性線維への高頻度条件刺激で後角に生じる神経興奮の可塑的変化について、まず、可塑的変化領域にある細胞を、その形態を赤外位相差顕微鏡像で同定した上でホールセルパッチし、(1)どの種類の細胞が可塑性に関与しているのかを直接的に調べる。また、(2)抑制性介在細胞の賦活が可塑性の方向(長期抑圧か増強)を決めるのかを検証しその条件を調べる。さらに、我々は、低頻度条件刺激が高頻度条件刺激による長期増強をリセットすることを示したが、(3)2種類の条件刺激はどこでどのように相互制御をするのか明らかにし、(4)可塑性発現を調節する物質の探索も行う。 平成14年度には、内因性光応答のイメージングとスライスパッチによる細胞内記録の同時計測を試みた。しかしながら結果的に、ホールセルパッチの記録時間が通常10分程度と短く、30分程度は必要な可塑性に関する実験は殆ど困難であった。そこで、脊髄後角の投射細胞を脳から電位感受性色素で逆行性に染色し、イメージングにより単一細胞記録を取ることを試み、その結果、一層マージナル細胞から良好に長時間の記録が取れた。そこで現在、可塑性について実験データを収集している。また、従来からの継続として、内因性光応答のメカニズムの解析、カフェインとハロセンによるシナプス前修飾、バニロイド受容体による修飾の解析を行い、前2者は論文として出版され、最後のものは現在、投稿中である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Asai T., Kusudo K., Ikeda H., Murase K.: "Intrinsic optical signals in the dorsal horn of rat spinal cord slices elicited by brief repetitive stimulation"European Journal of Neuroscience. 15. 1737-1746 (2002)
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[Publications] Kusudo K., Asai T., Ikeda H., Takenoshita M., Murase K.: "Inhibitory effect of caffeine on C-fibre-evoked excitation in the rat spinal dorsal horn recorded under Ca2+-free condition : an interaction with halothane"Neuroscience Letters. 336(1). 17-20 (2003)
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[Publications] Asai T., Kusudo K., Murase K.: "A new form of signal transmission : Nonsynaptic volume transmission in the central nervous system"Proceedings of the 3rd International Conference on Human and Artificial Intelligence Systems. 212-214 (2002)
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[Publications] Asai T., Kusudo K., Murase K.: "Delayed optical signals recorded from the dorsal horn of rat spinal cord slices and their dependence on the extracellular Ca^<2+> concentration"Neuroscience Research, Supplement. 25. S110 (2002)
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[Publications] Murase K.: "Optical imaging of afferent induced neuronal excitation in the rat spinal dorsal horn in slices : Neuronal plasticity slow responses"Kaibougaku Zasshi. 77(Suppliment). APICA17 (2002)
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[Publications] 赤池紀扶他編: "脳機能の解明:生命科学の主潮流[第12章5節]脊髄後角膠様質における神経興奮可塑性のイメージング:メタ可塑性と痛みの調節(村瀬、池田著)"ガイア出版. 483-492 (2002)