2002 Fiscal Year Annual Research Report
ファージディスプレイ法を用いたシナプス部位蛋白相互作用の解析
Project/Area Number |
13680868
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
森吉 弘毅 京都大学, 生命科学研究科, 助教授 (50263091)
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Keywords | 神経科学 / 蛋白質 / ファージディスプレイ法 / ユビキチンリガーゼ / 代謝型グルタミン酸受容体 |
Research Abstract |
我々は、シナプス部位における種々の蛋白のダイナミクスと、それによって引き起こされるシナプスの構造的、機能的な変化のメカニズムに興味を持ち、研究を進めてきた。本研究では、新たな蛋白相互作用を見つけることを目的として、そのための方法としてファージディスプレイ法を導入し、スクリーニングを行ってきた。 その結果、後シナプス部位に集積して存在するNMDA受容体の細胞外ドメインや成長円錐に多く存在する細胞接着因子L1の細胞外ドメインをプローブとして結合蛋白を検索した際に、ニューロン特異的に発現するユビキチンリガーゼであるfbx2が結合蛋白として同定された。解析の結果、fbx2はこれらの蛋白を修飾しているN結合型糖鎖を認識していることが判明し、これらの受容体の細胞内での代謝や品質管理に関わっていると考えられた。 技術的には、two-hybrid assayではこのような形の相互作用は原理的に同定できないため、この結果によってファージディスプレイ法の有用性が示された。ただ、既知の相互作用でもこの方法では同定できないものも多く、網羅的に全てをカバーするものではないため、two-hybrid assayやアフィニティ精製等の従来の方法と組み合わせて用いるのが最も有効であろう。 さらに、以前にtwo-hybrid assayを用いてmGluRlaのC末に結合する蛋白として同定されていたSiahも同じくユビキチンリガーゼであることから今回調べてみたところ、mGluRlaおよびmGluR5を特異的にユビキチン化し、分解へと導くことが判明した。グルタミン酸受容体をターゲットとするユビキチンリガーゼが同定されたのは初めてのことであり、シナプスにおけるグルタミン酸受容体の調節メカニズムに関わっている可能性が考えられる。 LTPやLTDといったシナプスの可塑的変化の際に、シナプスに存在する受容体量がダイナミックに変化することが近年明らかになってきつつあるが、このような変化を引き起こすメカニズムの一つとしてユビキチン化による調節系が考えられる。今回その過程に関わっている可能性のある分子の一端が明らかになったことで、今後の研究の進展に繋がることが期待できる。
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