2001 Fiscal Year Annual Research Report
神経細胞での時期特異的遺伝子破壊マウスをもちいた神経可塑性の解析
Project/Area Number |
13680885
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
池田 敏男 理化学研究所, 行動遺伝学技術研究チーム, 研究員 (80252526)
|
Keywords | Pou3fl遺伝子 / 前脳 / Cre recombinase / 回避学習 / 誘導型組換え / 合成ステロイド / プルキンエ細胞 / ジフテリア毒素 |
Research Abstract |
1)前脳特異的にPou3fl遺伝子を破壊したマウスの解析 ES細胞中での相同組換えを利用して作製したマウスを、生後2週以降に前脳興奮性神経細胞でCre recombinaseが発現するマウスと交配した。得られた子孫マウスでは、Cre reombinaseの発現に伴いPou3fl遺伝子産物が消失していることを免疫染色法で確認した。組織学的検索では脳の組織構築に異常は見られなかった。また、このマウスはみかけ上顕著な行動異常は示さなかった。pou3fl遺伝子は主に大脳皮質2/3層、5層および海馬CAl領域の興奮性神経細胞で発現しているので、一連の行動解析を行った。海馬依存的な学習である、水迷路学習およびトレース型の瞬目反射学習ではいずれも異常は見出せなかった。しかしながら、オープンフィールドテストにおいて有意に糞の排出量が少ないこと、および受動型、能動型回避学習において有意に学習効率が亢進していることが明らかになった。 2)誘導型遺伝子欠損マウスの作製 合成ステロイドによって組換え活性が誘導されるCre recombinaseを用いてトランスジェニックマウスを作製した。組換えに依存してLacZ遺伝子が発現するレポーターマウスと交配して、そのうちの一つのラインは主にプルキンエ細胞で組換えが誘導されうることを確認した。個体レベルで表現型が誘導できるかどうかについて検討をするために、組換えに依存してジフテリア毒素を産生し、神経細胞死が生じるノックインマウスを作製し、トランスジェニックマウスと交配した。得られたマウスに合成ステロイドを投与したところ、顕著なataxiaが見られた。回転棒テストにおける運動協調性も顕著に阻害された。また、組織学的検索によってプルキンエ細胞が脱落しているのが確認できた。従って、ataxiaは合成ステロイドの投与に伴う組換えによってジフテリア毒素が発現し、プルキンエ細胞の神経細胞死が生じ、細胞が脱落したことに起因すると考えられる。
|