2001 Fiscal Year Annual Research Report
インドネシア多民族都市環境におけるエスニック・チャーチの動向に関する宗教学的研究
Project/Area Number |
13710009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
木村 敏明 弘前大学, 人文学部, 講師 (80322923)
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Keywords | インドネシア / トバ・バタック / キリスト教 / 儀礼 / シンクレティズム / 都市社会 / 形態化 / 祈り |
Research Abstract |
平成13年度の研究は、交付申請書にもある通り、マクロなレベルにおける文献研究を先行させる形で進められ、インドネシアにおける公認宗教政策の導入と定着のプロセスを文献資料中心に明らかにしていった。その結果、1978年の国策大綱(GBHN)で決定された同政策がすぐに社会へと浸透定着していったわけではなく、後に文化省管轄の「信仰(クプルチャヤアン)」団体とされる諸宗教団体との葛藤が存在していたことが分かった。また、同政策の浸透定着過程を具体的に把握するため、結婚登録の問題に注目した。そして当初異宗教間の結婚や無宗教婚を容認していた市民登録所が、公認宗教に基づいた結婚のみを受け付けるようになったプロセスと、そこにおける1990年の「内務大臣通達No.47772535」の決定的役割を明らかにした。 その一方で、7-8月と3月にはインドネシア共和国北スマトラ州のメダン市において、トバ・バタック移民社会の実態調査をおこなった。これらの調査では主に、(1)教会での日曜の集会、(2)各種互助組合の祈祷会、(3)人生儀礼をとりあげ、都市社会におけるそれらの変容に関する基礎的データを集めつつ、一方でそれらの場面におけるキリスト教式の「祈り」および「説教」を録音、録画して収集するという作業をおこなった。前者に関しては下の「11.研究発表」にあげた2本の論文においてその成果の一部を発表したが、多民族都市社会において宗教現象が多様化複雑化する一方で、それに抗して様々な立場からその再編を試みる動きの存在することが明らかになった。本研究はその再編においてエスニック・チャーチが果たしている役割を検討することを目的としており、論者の研究の方向性が間違っていなかったことをこれらのデータは示しているものと考える。後者に関しては、いくつかの儀礼に関しては既にテープおこしと翻訳を終えたが、まだ作業が進行中である。
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Research Products
(2 results)