2002 Fiscal Year Annual Research Report
現象学的身体論・制度論と精神医学・精神分折の相関からみた意識構造の横断的研究
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13710016
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
廣瀬 浩司 筑波大学, 現代語・現代文化学系, 助教授 (90262089)
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Keywords | 現象学 / 主体化 / 個体化 / 差異 / メルロ=ポンティ / フーコー / ドゥルーズ / シモンドン |
Research Abstract |
本研究の目的は(1)精神分析・精神学の具体的な業績を参照しながら、現象学的な意識構造論の基盤を確立すること(2)現象学的な受動性の分析と、記号論的・構造主義的な分析とを統合した無意識概念を定義すること(3)その思想史的・その科学史的な文脈を明らかにすることであった。これらの研究によって得られた新たな知見は以下の通りである。 1 現象学と構造論の対立の乗り越え。 これまで現象学的な意識構造の分析と構造主義的な精神分析・医学はたがいに相反するものと考えられてきたが、前者の視点による身体論の最近の深まりによって、後者の「差異性」の問題に発生論的な視点が加わり、構造論的な精神医学の限界を突破するための端緒が切り開かれたこと(この点は、論文「後期メルロ=ポンティと精神分析」として発表した)。 2 「自己主体化」の概念の定義 「主体」の問題は従来は「意識の哲学」の枠組で語られてきていたが、上記の視点を導入することによって、「自己主体化」という概念を打ち出し、自己と自己の内的な関係が同時に他者との関係ともなるような、生命諭的な次元を明らかにしたこと。このことはミシェル・フーコーの思想を現象学的な視点で取り上げ直すことも可能にする(この点は、論文「生の形式の発明としての自己主体化」で明らかにした) 3 「個体化」の問題の深化 精神医学と現象学は、個人を個人たらしめる個体化の原理の探求において交差するが、ドゥルーズとシモンドンの思想を参照することによって、この問題は大幅に深められ、さらには現代の技術社会における病理をも主題化するための視点も切り開かれたこと(この点は、諭文「個体化の作用からアナーキーな超越論的原理へ」で明らかにした。 4 残念ながら、14年度に購入予定であったミシェル・セール編「フランス語哲学作品集成」は本年度は入手不可能であり、研究期間終了までに購入することはできなかったので、データ入力用のノート型コンピュータの購入で代替せざるをえなかった。 5 上記の成果の一部は、並行して執筆していた共著「知の教科書デリダ」に盛り込むことができた。現象学・精神分析との関係はまさにデリダの思想の中核をなしているからである。
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[Publications] 廣瀬浩司(単著): "後期メルロ=ポンティと精神分析"フランス哲学思想研究(日仏哲学会). 第七号. 40-58 (2002)
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[Publications] 廣瀬浩司(単著): "生の形式の発明としての自己主体化-ミシェル・フーコー講義録『主体の解釈学』を読む"情況(情況出版). 10月号. 138-157 (2002)
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[Publications] 廣瀬浩司: "個体化の作用からアナーキーな超越論的原理へ-ドゥルーズとシモンドン"情況(情況出版). 4月号. 209-224 (2002)
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[Publications] 廣瀬浩司: "記号(事典項目)"(永井均他編)事典 哲学の木(講談社). 228-231 (2002)
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[Publications] 林好雄, 廣瀬浩司(共著): "知の教科書-デリダ"講談社. 238 (2002)