2002 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀後半のウィーンにおけるオペラの上演システム
Project/Area Number |
13710021
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
松田 聡 大分大学, 教育福祉科学部, 講師 (60282547)
|
Keywords | オペラ / ウィーン / ブルク劇場 / ケルントナートーア劇場 / モーツァルト / ダ・ポンテ / オペラ・ブッファ / ヨーゼフ2世 |
Research Abstract |
本年度の研究は、大きく2つに分けられる。1つは、1786年2月におけるモーツァルトの《劇場支配人》とサリエリの《まずは音楽、それから言葉》の2作品の成立と、ウィーンにおけるオペラの公演の状況との関連を探る研究である(昨年度からの継続)。ウィーンでは、その半年前に2つの宮廷劇場での3種類の劇ジャンル、すなわちドイツ語演劇、イタリア・オペラ、ジングシュピールの公演という体制の成立したが、2作品の初演されたシェーンブルン宮殿における催しは、それが背景になっていること、さらに3種の劇ジャンルを対等に扱うという皇帝の理念を表明する場でもあったことが分かった。これについては平成14年10月の広島における美学会全国大会で口頭発表した。現在、この研究成果を論文として公表する準備を行っている。また、それに付随して《劇場支配人》のアンサンブル楽曲に関しても個別的な分析を行い、大分大学教育福祉科学部研究紀要に2編の論文を発表した。もう1つは、モーツァルトの《フィガロの結婚》の初演年における上演状況を、ブルク劇場のオペラ公演全体の中に置きなおして理解する作業である。このオペラの初演された1786/87年のシーズンはとりわけレパートリーの数が多く、また、シーズンの終わりに主要な歌手が交代し、それに伴ってレパートリーの大幅な入れ替えがあった。これは、1783年4月から1791年2月までのブルク劇場におけるオペラ公演の全日程をデータベース化し、統計的に考察を行って新たに得られた知見である。そして、これにしたがって《フィガロの結婚》の初演後の上演の状況を見直すならば、従来言われていたような、新たな人気作の登場によって上演が打ち切りになったというのは事態を単純化しすぎていることが分かる。より複雑な実相の下で個々のオペラの上演の状況を理解し、当時における受容の様態を明らかにする必要があるのである。これについては、予備的な口頭発表を平成14年12月の那覇における全九州大学音楽学会で行った。この研究成果はいくつかの論文として公表していく予定である。
|
-
[Publications] 松田 聡: "モーツァルトの《劇場支配人》K.486における終結ヴォードヴィル-「ブッフのソロ」のもつ喜劇的効果に関する考察-"大分大学教育福祉科学部研究紀要. 第24巻第2号. 239-251 (2002)
-
[Publications] 松田 聡: "アンサンブル楽曲におけるモーツァルトの作劇術-《劇場支配人》K.486の第3番の三重唱を例に-"大分大学教育福祉科学部研究紀要. 第25巻第1号. 1-13 (2003)