Research Abstract |
Osherson, Smith, Wilkie, Lopez & Shafir (1990)によれば,文科系の学部生が被覆度に基づく確証度判断を行っているのに対し,岩男(1999)では,生物学などを専攻する博士課程大学院生は,分散度に基づく確証度判断を行っていた.平成13年度の研究では,3つの実験を通して,被覆原則と分散原則というカテゴリに基づく帰納推論における方略の個人差が生じる理由について調べた.人工的な知覚的カテゴリに共通属性やカテゴリラベルを付加したり,カテゴリの階層レベルを変えたりすることによって,カテゴリの凝集性を操作し,帰納推論の確証度判断に及ぼす影響を調べた.実験1および2の包含カテゴリは,基礎レベルに近いと判断されており,凝集性の高いカテゴリであった.実験1と実験2の違いは,実験2の方がより非典型的な事例を含んでいる点にあった.どちらの実験でも,分散原則に基づく確証度判断が行われており,包含カテゴリの凝集性が高い場合,分散原則に基づく確証度判断が行われることが確かめられた.ただし,共通属性やカテゴリラベルの付与は,確証度判断に影響を与えていなかった.実験3では,包含カテゴリが上位カテゴリ以上のレベルと判断されており,包含カテゴリの凝集性は,実験1や2と比べかなり低い.この場合,網羅原則に基づく確証度判断が行われており,凝集性が低いカテゴリの場合,被覆度に基づく確証度判断が行われることが確かめられた.実験3でも,共通属性やカテゴリラベルの付与は確証度判断に影響を与えていなかった.以上のことから,カテゴリの凝集性,とくにカテゴリの階層が,確証度判断に影響することが明らかになった.
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