2001 Fiscal Year Annual Research Report
いじめられ体験をもつ被害者のアイデンティティ-喪失という観点からの臨床心理学的研究-
Project/Area Number |
13710074
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 健夫 九州大学, 大学教育研究センター, 助教授 (20294986)
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Keywords | いじめ / shunning / アイデンティティ / 対処過程 / 物語 / 喪失 |
Research Abstract |
1.いじめられ体験の態様、原因認知といじめ認識、対処の"物語"と影響についての質問紙調査(回顧法)を、大学生402名に対して施行した。そのうちの24名に対して半構造化面接を行い、体験を意味づけ、喪失した以前のアイデンティティに代わるものと今後の見通しをもたらす内的な"物語"の内容等について、現在、面接逐語録をもとに再分析中である。 第一次調査分として田中(2001)において報告した結果の概要は、以下の通りである。大学生152名(平均19.4歳)のうち、いじめ被害者は55名、加害者かつ被害者は30名。いじめ被害者のアイデンティティの地位についてTanaka(2001)が整理した4類型は確認され、各タイプと主観的苫痛感及び長期的影響との関連が示唆された。 被害者が抱いた"物語"(素朴な言葉やイメージを含む)については20名が記載し、内容は次のように分類された;(1)加害者を取るに足らない存在と見下す、(2)自分自身に対する特別という感覚による乗り切り、(3)被害の意味づけを肯定的な方向に移行、(4)いずれは解決するという格言などに託す。事例分析では、これら"物語"が対処のプロセスといじめられ体験の長期的影響に関わることが明らかになった。いじめ認識は、当時と現在で計15名について認識の移行が確認された。具体的な対処では、我慢36%、無視26%、反撃8%、誰かに相談14%、和解9%であり、いじめ認識「あり」の場合は対処として「我慢」か「相談」が、「あり→なし」では「無視」「和解」、「なし→あり」では「我慢」「反撃」が選択されており、それらの関連について考察した。 2.いじめ被害者の対処に関する臨床心理学的研究と、心的外傷の被害者のアイデンティティに関する論文を、大学院生とともに隔週2〜3編ずつ紹介・検討してきており、今後レビュー論文としてまとめる予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Takeo Tanaka: "The Identity Formation of the Victim of Shunning"School Psychology International. 22(4). 463-476 (2001)
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[Publications] 田中 健夫: "大学生による過去のいじめられ体験認識と対処"日本教育心理学会第43回総会発表論文集. 554 (2001)