Research Abstract |
14年度前半に2つの研究を行なった。第1に,ユーモアがどのような効果をもっているかをフィールド実験で検討した。大学の講義を用いて,授業中のユーモアが学習への動機づけ,理解にどのような影響を与えるかを調べた。その結果,相手を楽しませる遊戯的ユーモアは,授業の雰囲気を良くし,学生の授業への動機づけを高めることが明らかとなった。しかしながら,学習効果には影響をもたらさなかった(牧野,2002a)。ユーモアのある授業の方が授業への満足度が高く,教員の評価も高かった(牧野,2002b)。第2に,ユーモアの教育効果の実用性を検討するため,実際の小・中学生を対象とした模擬授業で実験を行った。その結果,授業内容に関連のあるユーモアは,学習を促進しており,学習への動機づけを高めていた。また,遊戯的なユーモアを使う教員は子どもたちから親しみをもたれていた(牧野,投稿中)。さらに,ユーモアのある授業を受けた子どもは,その後の学習に対しても興味を持っていた。この結果から,授業中のユーモアは,大学生のような青年よりも小・中学生に対してより有効であることが明らかとなった(牧野,投稿中)。 14年度後半には,本年度前半に実施した実験のまとめを行った。すでに公刊されているものに加え,雑誌投稿の準備を行った。また,平成13年度からの一連の研究の総合考察を行った。本研究の最大の特徴は,従来,単一概念とされてきたユーモアを遊戯的ユーモアと攻撃的ユーモアに分類し,その教育効果を検討したことである。その結果,遊戯的ユーモアは受け手の気分を肯定的にすることにより,学習への動機づけを高めること,授業の雰囲気をよくすることが明らかとなった。また,遊戯的ユーモアは,受け手のストレスと不安を軽減する効果もみられた。これらの効果は,ユーモアを用いた効果的な教育方法の基礎となるものであり,今後,実践方法の開発が必要である。
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