2002 Fiscal Year Annual Research Report
欧米社会学の創造的受容に関する研究(人物誌からみた近代日本社会学史の試み)
Project/Area Number |
13710124
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
竹村 英樹 慶應義塾大学, 教育課程センター, 専任講師 (10216939)
|
Keywords | 社会学者 / 伝記 / 留学生 / アメリカ社会学 / キリスト教 / 社会改良主義 |
Research Abstract |
本研究は19世紀末にアメリカに留学した日本人から見た、近代日本社会学史研究である。彼らは当時のアメリカ社会学をいかに受容したのか。 19世紀末にアメリカに留学し社会学を学んだ日本人の多くはクリスチャンであった。イェールには浮田和民(1859-1946:在学1892-894)と片山潜(1859-1933:在学1892-1895)、ジョンズ・ホプキンスには元良勇次郎(1858-1912:在学1885-1888)と高木正義(1863-1932:在学1892-1895)、ハーバードには岸本能武太(1866-1928:在学1890-1894)、コロンビアには米田庄太郎(1873-945:在学1898-1900)が留学している。 彼らは、制度化された専門分野としての社会学を学んでいない。当時は学会もなく、学会誌もなく、学部も存在しない。にもかかわらず、彼らは日本に帰国後、大学で社会学を講じ、社会学書を執筆する。一方、制度化した社会学を学んだ20世紀の留学生にクリスチャンが少ないことも想起しておきたい。 上述した東部の大学はキリスト教を起源にもつ。アメリカ社会学のルーツには、キリスト教のモラリズムに支えられた社会改良主義があることはよく知られている。このキリスト教的要素を切り離し、社会学の世俗化をはかることで「科学としての社会学」を制度化を推進したのが、スモール、ギディングスらアメリカの社会学第一世代であった。その後の「アメリカン・サイエンスとしての社会学」の発展を私たちはよく知っているが、その前史にキリスト教的土台があることに私たちはあまりに無自覚である。むしろ、19世紀末の留学生はこれを通路としてアメリカ社会と社会学を理解したのではないか。これを仮説として、個人別・大学別に検討することで、19世紀末の社会学とその受容を明らかにすべく、研究成果の発表を準備中である。
|