2001 Fiscal Year Annual Research Report
生業活動の多様性と変遷過程にみる人一里山関係の動態に関する生態人類学的研究
Project/Area Number |
13710190
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
吉村 郊子 国立歴史民俗博物館, 歴史研究部, 助手 (50332119)
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Keywords | 炭焼き / 木炭 / 生業 / 和歌山 / 里山 / 燃料革命 |
Research Abstract |
本年度は和歌山県日高地域の木炭生産世帯を中心に、昭和20年代以降、各世帯が営んできた生業活動の内容や組みあわせの実態およびその変遷について調査をおこない、以下の点を明らかにした。 昭和30年代の燃料革命をさかいに、木炭生産をやめた世帯は少なくないが、その多くは以前から農業との兼業であり、自身で水田や畑を所有していたために、他生業への移行が比較的容易であったと考えられる。一方、木炭生産業をつづけてきた世帯も、その多くは昭和30〜40年代に日高地域に導入された梅栽培という新たな生業を受け入れて、専業から兼業へと変わり、現在に至る。 また、現在、木炭生産をおこなっている世帯をさらに詳しくみると、それらは上述のように、(1)かつて専業だったが、昭和30〜40年代に他生業(梅栽培)を導入して兼業となった世帯、のほかに、(2)燃料革命以前から今日まで、(日高地域において)木炭生産だけを専業としてきた世帯、(3)昭和30〜40年代に一度、木炭生産をやめて別の生業に変わったが、最近になって再び木炭生産業に戻った世帯、などに分けられる。また、第二次世界大戦終了後(昭和20年代)には日高地域に多くの木炭生産者が集中していたといい、その時期に、同地域から生産者があまりいなかった県内の他地域に移り住んで木炭生産をつづけ、現在では若い生産者を育成しながら大規模に木炭生産業を営む人もいる。 このように、調査ではさまざまな形で炭を焼いてきた人びとのライフヒストリーの収集をおこなったが、それらについてはわたしたちの暮らしにおける木炭の位置づけの変化(例えば、昭和30年代の燃料革命や近年の木炭ブーム、輸入木炭の増加など)や調査地域における新たな生業の導入とそれが広がる過程、および各世帯における家族構成の変化といった経済的・社会的な背景との関連から、現在、分析をすすめており、各世帯の生業選択の要因についてさらに検討をおこなっていく予定である。
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