2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13710193
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
後藤 雅知 千葉大学, 教育学部, 助教授 (50302518)
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Keywords | 近世史 / 漁業社会構造 / 干鰯生産 / 房総 / 東上総 / 漁業 |
Research Abstract |
近世における漁業社会構造の特質を検討するために、本研究では房総地域のなかでも、特に南岸から東上総沿岸地域を取り上げて、干鰯生産を中心とした、さまざまな漁場利用が重層する社会のありようを分析した。 その結果、(1)房総南岸では村落内部が農業集落と漁業集落とに分裂した事例が多いのに対して、干鰯生産が発達した東上総南岸地域では、村落内部の各家がそれぞれ夏季の農業と冬季の漁業との兼業を前提としたこと、その点でこうした村々は半農半漁村として位置付けられうること、(2)土地を所有しない階層は東上総南岸から内房地域にいたるまで、広範に移動しながら、網水主として各網元に雇用されるなど、通年的に漁業生産に従事することで生活を維持していたこと、(3)これと相即して、冬・春の干鰯生産を中心にしながらも、夏季の鰹漁や秋季のサンマ漁などを併用して、通年的に漁業を行い、上述した水主を雇用する網元がなどが現出しつつあったこと、(4)網元のなかでも、運上金上納の対価として漁業権を確保した浦請負人は、漁業経営を多角化し、漁業生産への利益吸着を強めたこと、(5)その結果、網水主層と網元(特に浦請負人)との間には、水主賃金の高騰をめぐって対立が激化し、また半農半漁村では漁業をめぐる対立が村全体の問題ともなったため、ときには村方騒動となって、浦請負人の特権は徐々に動揺していったこと、などが明らかとなった。 今年度は、上記(4)・(5)については、いまだ十分明らかにしたとはいえず、特に浦請負人の生業のありよう、複層的な漁場利用をめぐる漁民と浦請負人の矛盾関係については、素材を広げながら来年度も検討していくことにしたい。
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