2001 Fiscal Year Annual Research Report
宋〜明代の裁判における法治主義的傾向の時期的・地域的差異に関する研究
Project/Area Number |
13710212
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
青木 敦 大阪大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (90272492)
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Keywords | 長江 / 財産権 / 法治主義 / 人治主義 / 法制 / 地域 / 裁判 / 宋代 |
Research Abstract |
当初の計画に従い、まず13世紀の女子財産権の問題を追究した。第一に、この分野で重要な『名公書判清明集』および『後村先生大全文集』の関連個所を原文データベース化しつつ、判語における法利用の地域性を検討した結果、地域的には江西・湖南出身の范応鈴らの判語において法利用の割合が高いことが明確となり、研究代表者の従来の江西法文化研究の成果が裏付けられたが、なお判語の編集過程の考察などの課題が残された。この成果は英文にて論文とし、Acta Asiatica誌に掲載予定。また第二に、法治主義的傾向の地域性の観点から、従来の財産権研究に一石を投じるべく、女子分法の存在理由の解明に着手した。男女間の関係において重要なのは陰と陽であり、陰陽家の地域性について宋〜明代の文献を広く収集した結果、江西では埋葬においてさえ陰陽家の影響が強いことが発見され、さらに「男合得女之半」という従来からその存在が謎とされてきた女子分法の文言が、南宋、元、清の『周易』関連の陰陽家の文献に発見される陰陽家の「陽常得陰之半」等の語句に相当することを発見、ここに女子分法と江西の陰陽思想との関連の可能性が強く示されるに至った。この議論は、2001年8月20日、台湾国家図書館漢学研究センターにおける国際会議「欲掩彌彰:中國史文化中的『私』與『情』」において「地域與國法:南宋女子分法與江南民間慣習關係再考」と題して発表され、注目を得た。これについては現在中国語で論文を執筆中である。なお、この研究過程を、日本においても「社会経済史」と題する文章中において発表した。さらにこの研究を進める中で、宋の地方制度の要である監司という語の意味が、我が国の宮崎市定・梅原郁両氏を初め、事典等においてもずっと誤った意味に取られていたことも見出され、「宋代の監司の語義について」と題する論文で発表された。
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