2001 Fiscal Year Annual Research Report
宋元時代における「三国志伝説」の、『三国志平話』成立に与えた影響についての研究
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13710264
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中川 諭 新潟大学, 教育人間科学部, 助教授 (20261555)
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Keywords | 三国志平話 / 元雑劇 / 三国志演義 / 三国伝説 |
Research Abstract |
本年度一年間の研究を通して、以下のような知見が得られた。 宋代になって講談・演芸の中で「三国志もの」が取り上げられる中で、唐代までには存在しなかった三国志伝説が新たに発生する。これは歴史事実とは大きく食い違いを見せたり、間違った話であったりする。そしてそのことを指摘する文章も書かれ、歴史事実とは異なる伝説は批判の対象となる。しかし一般大衆に受け入れられた三国志伝説は、元代・明代・清代とさらに発展していく。こうしたことを背景にして、「三国志物語」を取り上げた元雑劇の作品や『三国志平話』が書かれることになる。そして『三国志演義』が編纂されるに当たり、こうした伝説を物語としてより面白くなるように改編され、そして『三国志演義』の中に組み込まれていく。しかし「歴史事実」という観点から見れば誤りであることには違いなく、この点は批判の対象とされ、清代になってからの刊本である毛宗崗批評本では削られることになる。 また、大衆に受け入れられた伝説が、レベルの高い読書人・教養人たちの間にも浸透し、彼らの作る詩文の中に現れることもある。一方『三国志演義』の毛宗崗本のなどの影響から、一般庶民のための文芸作品の中から「伝説」が削られることもある。すなわち本来「雅」であったものと「俗」であったものの間で交流が起こり、読書人・教養人たちの読書に変化が起こる。こうして、明清時代になると、宋代までに確立された「雅俗認識」に変化が起こり、両者の間の協会が小さくなっていく。 以上のことを、「漢の寿亭侯」と題する論文にまとめ、公表する予定である。
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