2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13710269
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Ryutsu Keizai University |
Principal Investigator |
村上 之伸 流通経済大学, 経済学部, 助教授 (20306103)
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Keywords | 《廈英大辞典》 / 《彙音妙悟》 / 《十五音》 / 泉州方言 |
Research Abstract |
ダグラスは《廈英大辞典》を編集する際、泉州と〓州の韻書をいくらか参考にしたようであるが、実際に調べてみると、音韻体系に以下のような相違があることが分かった。 (1)《廈英大辞典》中の泉州方言は泉州系韻書《彙音妙悟》よりも音韻的に現代語に近い。つまり現代泉州方言の形成過程を知る上で《廈英大辞典》は重要な資料であるということができる。 具体的な例を挙げると、《彙音妙悟》の箴母(-m)、恩母(-n)、生母(-ng)は全て主母音が同じ中舌母音であるが、《廈英大辞典》では、箴母、生母と恩母の間に表記上の相違がある。そして現代泉州方言では全てが他の韻に合流しているが、その主母音には《廈英大辞典》の主母音の相違が反映されているのである。また、《彙音妙悟》で存在した声母dzが現代泉州方言のように1に合流するまでの過渡的な段階も《廈英大辞典》から見ることができる。その他、《彙音妙悟》では廈門と同様、-iaとなる支韻開口牙喉音字(白話層)のほとんどが-aで読まれる点や《彙音妙悟》の-iaNが-uiNに合流している点など、現代泉州方言と完全に同じ現れ方をする例もある。 (2)《廈英大辞典》中の〓州方言の音韻体系も〓州系韻書《十五音》と同じではない。例えば「妹卦懐」などの蟹合一二等字がoεとなるが、現代〓州音や《十五音》にはこの韻母自体存在していない。 《廈英大辞典》の泉州、〓州方言は音韻的にはあまり古くはないが、現代語の音韻体系を歴史的に考察する際に役立つと思う。ただし、語彙には個別的により古い音形が残っている可能性がある。この辺りについては引き続き調べていきたい。
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