2001 Fiscal Year Annual Research Report
エラ・キャラ・デロリアの文学とアメリカの対先住民文化政策
Project/Area Number |
13710279
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
喜納 育江 琉球大学, 法文学部, 助教授 (20284945)
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Keywords | エラ・キャラ・デロリア / フランツ・ボアーズ / ルース・ベネディクト / ダコタ・インディアン / ダコタ・インディアン財団 / Waterlily / アメリカ先住民文学 / インディアン・ニューディール |
Research Abstract |
本年度は、サウス・ダコタ州ダコタ・インディアン財団において、エラ・キャラ・デロリアとフランツ・ボアーズ、そしてデロリアとルース・ベネディクトとの間に交わされた書簡を閲覧、収集することができた。デロリアは、自らの部族の文化や言語に対する知識によって、コロンビア大学におけるボアーズ人類学の発展に重要な貢献をし、白人と学問的レベルでは対等に対話ができたと言われているが、ベネディクトからデロリアへの書簡を見ても、ベネディクトが、先住民女性の文化を文化人類学的に体系化しようとする中で、デロリアの学問的な助言を請いていたことが示されている。すなわち、そこには白人女性と先住民女性の学究的連帯も存在していたと言える。しかしその一方、ボアーズのもとで有償で労働していたデロリアと、ボアーズとの間には経済的な力関係が存在し、さらに、ボアーズの部下であるベネディクトが、滞りがちな給与に対するデロリアの申し立ての窓口となっていたため、ベネディクトとデロリアの間にもしばしば緊張関係が存在していた。すなわち、文化人類学の発展は先住民文化の知識を体系化することによって先住民文化への理解を促し、インディアン・ニューディール政策すなわち先住民の経済的、文化的自立を助長する要因にはなったものの、先住民が白人と全く同等の権利を有するという意識を助長するには至らなかった。今回の調査によって明らかになった以上の点から鑑みて、登場人物の心の動きを描きつつさまざまな知識を織り交ぜていく小説Waterlilyは、知識としての先住民文化への関心と、先住民そのものへの関心を分離させまいとするデロリアの意向の表象であると言える。
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