2001 Fiscal Year Annual Research Report
李光洙の歴史小説と同時代の偉人伝との比較を通じ小説と伝記の境界を明らかにする
Project/Area Number |
13710299
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
和田 とも美 富山大学, 人文学部, 講師 (60313582)
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Keywords | 朝鮮文学 / 歴史小説 / 立志伝小説 / 日本文学 / 近代 / 植民地 |
Research Abstract |
国内での作業として、日本近代文学の先行研究を参照しつつ、日本の明治期における物語本の状況を調査した。その結果、スマイルズの『西国立志伝』の翻訳を契機に、'立志伝小説'と呼ばれる一群の小説が青少年の愛読書となった状況を把握した。ここで'立志'が'植民'と関連付けられていく過程が先行研究により明らかになっている。これは朝鮮の近代文学を読み解く上で重要な示唆を与える。韓国における資料収集の結果、朝鮮でも同時期に多くの'偉人伝'の出版が確認された。被植民地朝鮮では'偉人'が'植民'に繋がることは有り得ず、外敵を撃退した李舜臣のような人物が'偉人'として提示される。ただし植民地期においては日本の影響が強く、朝鮮にとっての偉人像を把握しにくいという難点がある。そこで『解放空間新聞資料集成』を購入し、解放直後の新聞を参照することにより、日本の支配力が表面的にではあれ排除された朝鮮にとっての偉人像の把握を試みた。そこで新聞漫画において'民族的英雄乱立状況'が強く批判されており、単なる'民族主義'では偉人の要件にはなりえないことが把握された。日本の'立志伝小説'では資本の無い若者が'外地'で新しい資本を獲得することによって立志が可能になるが、朝鮮においては'民族主義'は何らの資本をもたらさない為、立志の手段には成り得ない。この観点から朝鮮近代文学の幕開けと言われる李光洙の長篇作品『無情』に新しい解釈の可能性を提出できる。この作品は貧しい若者の立志という点において日本の'立志伝小説'の枠組みと一致している。しかし被植民地に属するこの若者が'植民'によって自身の貧困を克服することはない。ここで何が立志の手立てとなるかという問題提起は、李光洙の長篇小説の朝鮮的特性を明らかにする上で鍵となる。次年度の作業は、この観点から李光洙の長篇小説が、日本の'立志伝小説'との差異を明らかにするところから始める。
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Research Products
(1 results)