2001 Fiscal Year Annual Research Report
第二次世界大戦以前の香港における言語接触と言語構築
Project/Area Number |
13710305
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉川 雅之 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 講師 (30313159)
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Keywords | 漢語(中国語) / 粤語(広東語) / ピジン英語 / 中国・華南の言語接触 / 華人の英語習得 / 対音資料 / 文体 / 香港研究 |
Research Abstract |
1.今年度に行った研究によって得られた成果 (1)言語政策・言語教育:海外の機関における文献調査を予定どおり行った。訪問・調査を行った機関は大英図書館、フランス国立図書館、香港大学図書館である。調査は順調に遂行され、特に大英図書館で19世紀香港の統治者階級や知識人が執筆に関わった「対音資料」(英語に対し発音の近似する漢字を当てて、華人の英語習得目的に販売されていた語彙・会話集)を20点確認することができたのは、今後研究を継統し、成果を出す上でも大きな収穫であった。これらの資料は香港や中国で制度(学校教育)としての英語教育が確立する以前の段階の産物であると考えられ、特徴を分析・整理することで、言語習得の一形態が明確にされるはずである。 (2)英語と粤語(広東語)の言語接触:大英図書館で確認された20点の「英華対音資料」を概観すると、英語文の中にピジン英語と思われる特徴が散見された。含まれるピジン的性質には文献間で質・量共に差が存在することも認められた。またフランス国立図書館所蔵の『紅毛買賈通用鬼話』と『紅毛番話貿易須知』は大英図書館所蔵の『紅毛通用番話』と全く同一内容であることが確認されたが、これは当時の香港や中国・広東では同一内容の対音資料が名や版を変えて、異なる版元から印行されていた事実を示すものと考えられる。 (3)粤語の書記言語化と文体:規範的中国語文の中に粤梧成分を混在させた散文文体の存在が、遅くとも香港開港期(19世紀中葉)まで遡ることを、『アジア遊学』36号に掲載の論文「香港の若者が母語を書くとき」で言及した。これは本研究の成果によるものである。 2.今後の研究展開に関する計画 次年度は引き統き文献調査を積極的に進める。具体的にはハーバード大学図書館(米国)、Deutsche Staatsbibliothek(ドイツ)において「英華対音資料」の捜査を行う。またバーゼル大学図書館(スイス)においては、バーゼル教会などのブロテスタント・ミッションが、香港で華人に対する教育にどのように関わったかを示す賓料を調査したいと考えている。
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Research Products
(1 results)