2002 Fiscal Year Annual Research Report
MCMC法による多変量ボラティリティ変動モデルの推定と市場リスクの評価への応用
Project/Area Number |
13730026
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中妻 照雄 慶應義塾大学, 経済学部, 専任講師 (90303049)
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Keywords | ポートフォリオ / ボラティリティ / 市場リスク / マルコフ連鎖モンテカルロ法 / マルコフ分布混合モデル |
Research Abstract |
本研究は,高次元の多変量ボラティリティ変動モデルをマルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法によるベイズ推定によって分析する手法を確立し,それをポートフォリオの市場リスクを評価するのに応用することを目指すものである.平成14年度の研究では,前年度の研究で使ったマルコフ分布混合モデル(以下,単にモデルと呼ぶ)を中心にしてポートフォリオの市場リスク評価を行うモデルの開発を進めることにした. モデルでは,ポートフォリオを構成する資産を日次収益率のボラティリティ(標準偏差)の水準に応じて高低の2段階あるいは高中低の3段階のグループに分類している.しかし,平均と分散を同時に動かそうとするとモデルの推定が面倒になることから,資産の平均収益率は各グループで同じであると仮定している.モデル内での資産の分類は固定されたものではなく日々確率的に変化するものであり,各々の資産が各グループに属する確率はマルコフ連鎖によって決定される.このモデルにおいて,ボラティリティの異なる資産のポートフォリオ内での構成比率が日々変動することによって,ポートフォリオ全体のボラティリティが変動する仕組みになっている. つまり,ポートフォリオ内で高いボラティリティのグループに属する資産が多いときにはポートフォリオ全体のボラティリティは高くなり、ボラティリティが低い資産が多いときには全体のボラティリティも低くなることになる. このモデルを用いて日本の株価の日次データに対してVaRなどの代表的な市場リスクの尺度を評価し,ヒストリカル・シミュレーションなどの他の評価方法との比較を行った.結果は近く論文にまとめファイナンス関連の学術雑誌に投稿する予定である.将来の課題ではあるが,可逆MCMC法などを使ってモデルにおけるボラティリティの水準の数を確率変数として変動させる方法を研究したいと考えている.
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