2001 Fiscal Year Annual Research Report
日本における税制改革の税収と構造的財政赤字に対する影響について
Project/Area Number |
13730072
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
前川 聡子 大阪経済大学, 経済学部, 講師 (40330120)
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Keywords | 税制改革 / 所得税 / 租税支出(Tax Expenditure) / 実証分析 |
Research Abstract |
平成13年度は、研究予定項目のうち、日本における所得税の改革が税収変化に与えた影響について分析を行い、第58回日本財政学会で報告すると共に、雑誌へ投稿・掲載した。 (1)研究の目的 日本におけるこれまでの税制改革・改正のうち、所得税改正では税率構造の簡素化と同時に、所得控除の創設・引き上げが頻繁に行われてきた。果たしてこのような税制改正によって、所得税収はどれだけ変化してきたのか。税収変化には、経済状況の変化(例、景気変動や所得水準の上昇等)によって変動する部分と、制度改正によって変わる部分とに分けることができる。そこで、本年度の研究では税制改正による税収変動の実態を明らかするため、所得税収の変化を「経済成長による変化」「税率による変化」「所得控除による変化」の3つの要因に分解するという推計を行った。 (2)研究結果 推計の結果明らかになったことは、次の3点である。 1.改正の行われる時の経済状況によって、税率改正による影響と所得控除改正による影響の相対的な比重に違いが生じる。高成長期における改正では、税率引き下げによる減収効果の方が所得控除拡大による減収効果よりも大きいのに対し、低成長期における改正では、むしろ所得控除拡大による減収効果の方が税率引き下げの効果よりも大きくなる。 2.所得階層別に改正の影響を見ると、低所得者層ほど所得控除による税負担変化の影響を受けやすい。高所得層については、明らかに税率変化による税負担変化の影響の方が大きい。 3.1.2.のような制度改正による影響も、所得の伸びが大きい場合には相殺され、むしろ税収増加や税負担増加になってしまう。これまでの日本においては、減税指向の所得税改正が行われてきたにもかかわらず、税収は増え続けてきた背景には、高度成長期等の所得水準の上昇が税制改正による税収減少の影響をうち消していたためと考えられる。
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Research Products
(1 results)