2001 Fiscal Year Annual Research Report
エントロピー型カオス尺度を用いた量子スピン系のカオスの特徴付け
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13740082
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
井上 啓 東京理科大学, 理工学部, 助手 (70307700)
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Keywords | カオス / 量子古典対応 / 量子パイこね変換 / 対数時間 |
Research Abstract |
カオスは、複雑な振る舞いを示す予測の難しい現象として知られている。しかしながら、カオスは、完全にランダム(非決定論的)な現象ではなく、隠された規則性が存在している。すなわち、カオス現象は、決定論的な法則に従う。そこで、近年では、非決定論的な現象をカオスを使ってシミュレートし、将来に対する予測モデルの構築などにカオスが利用されている。このカオスの最もよく知られている特徴の一つが、初期値に対する鋭敏性という性質である。これは、最初の状態がほんのわずかしか違わないにも関わらず、ある程度時間が経つと、まったく異なった結果を導き出すという性質である。 近年、この従来のカオス研究(古典カオス)の延長として、量子系における複雑な振る舞いを調べる量子カオスという研究がなされるようになった。本年度は、古典系におけるカオスを測る指標(古典系におけるエントロピー型カオス尺度)の量子系への拡張を試みたが、この指標では、準周期的な振る舞いとカオス的な振る舞いの間の違いを明確に捕らえることができない場合があることが判明したため、来年度は、より適切な定式化に向けて改良を試みる予定である。また、量子カオスに研究の一つとして、古典カオスを量子系に拡張したときに、どの程度の時刻まで、量子-古典対応が存在するかといったことが研究されている。すなわち、量子系において、どのくらいの時刻まで、従来のカオス(古典カオス)の性質が維持できるかといった問題である。現在までのところ、多くの数値計算から、プランク定数をhとしたとき、T=Clog/h(対数時間)(Cは比例定数)になるまでの間、この性質が維持されるといった結果が報告されている。本研究では、数値的にしか導けなかったこの関係を、量子パイこね変換という量子カオスのモデルを用いて、解析的に導出した。また、量子-古典対応が時刻Tで崩れる状況をエントロピー型カオス尺度を用いても説明できることを示した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] K.Inoue, M.Ohya, I.V.Volovich: "Semiclassical properties and chaos degree for the quantum baker's map"J. Math. Phys. 43・2. 734-755 (2002)
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[Publications] K.Inoue, M.Ohya, I.V.Volovich: "A treatment of quantum baker's map by chaos degree"to be published in Quantum Information. IV. (2002)