ホロー陰極利用による高周波電子銃生成電子ビームの高輝度・長パルス化

2002 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 13740152
• Research Institution: Kyoto University
• Principal Investigator: 増田 開 京都大学, エネルギー理工学研究所, 助手 (80303907)
• Keywords: 高周波電子銃 / 電子ビーム / 熱陰極 / 逆流電子

Research Abstract

本研究の目的は,熱陰極型高周波電子銃による相対論的高輝度電子ビーム生成の長パルス化のため,熱陰極型高周波電子銃の唯一の課題である逆流電子による陰極加熱の問題を大幅に軽減する方策を探究することにある.本研究の予備研究において研究代表者らは数値解析により戻り電子が陰極中心部に集中することを見出し,また,実機においてもこれを裏付ける陰極中心部の損傷が見られていた.これらの結果から,従来の陰極に代えて中空のホロー陰極を用いることにより,逆流電子の陰極面への衝突を避け,熱陰極型高周波電子銃の長パルス運転の可能性があると考え本研究計画を実施し,以下の成果を得た.
まず,赤外放射温度計と小型XYステージを用いて従来の穴のない陰極(6mmφ)の表面温度分布の測定を可能とし,従来の理論予測であった陰極中心部への戻り電子の集中を初めて実験的に確認できた.
次に,ホロー陰極(穴の直径1mmφ)を製作し,従来の陰極に代えて高周波電子銃に設置して実験を行った.前述数値解析並びに温度分布測定の結果から,十分に検出可能な効果が期待されたが,実際には引き出し電子ビーム特性及び陰極表面温度のいずれにも変化は見られなかった.その原因として,使用後のホロー陰極表面には穴を避けるように損傷が見られ,戻り電子は期待に反して穴を逸れてこの部分に集中したと思われる.これは,(1)陰極の取り付け精度に起因する非軸対称性,(2)穴部分に導体が無くなったことによる電界形状の変化,の両方に起因すると考えられる.
残念ながら,今回初めて試作したホロー陰極形状では電子ビームの高輝度化は果たせなかったが,その原因が使用後のホロー陰極の観察により簡単に判明し,ホロー陰極改造の明確な方針を得ることができたことは幸運であった.

Research Products

• [Publications] T.Kii, T.Yamaguchi, R.Ikeda, Z.-W.Dong, K.Masuda, H.Toku, K.Yoshikawa, T.Yamazaki: "Experiment and Analysis on Back-Bombardment Effect in Thermionic RF Gun"Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A. 475・1-3. 588-592 (2001)
• [Publications] K.Masuda, T.Horii, S.Amazaki, T.Kii, H.Ohgaki, T.Yamazaki, K.Yoshikawa: "Transient Beam Loading Effects due to Back-Streaming Electrons onto a Thermionic Cathode in an RF Gun"Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A. 483・1-3. 315-320 (2002)
• [Publications] K.Masuda, T.Kii, T.Yamaguchi, H.Toku, K.Yoshikawa, T.Yamazaki: "Studies on Back-Streaming Electrons onto a Thermionic Cathode in an RF Gun"International Journal of Applied Electromagnetics and Mechanics. 14・1-4. 163-170 (2002)