2002 Fiscal Year Annual Research Report
光電子分光による非磁性金属表面上の磁性原子の電子状態研究
Project/Area Number |
13740194
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
須崎 友文 理化学研究所, 表面化学研究室, 基礎科学特別研究員 (20332265)
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Keywords | 表面界面電子状態 / 光電子分光 / 強相関電子系 |
Research Abstract |
近藤効果や高温超伝導をはじめとして、固体物性における不純物ドープ、不純物置換の役割はしばしば決定的に重要である。申請者は、固体表面を不純物系の電子状態解明に積極的に役立てるという視点に立ち、Fe/Cu(111)の光電子分光結果の報文を発表し、さらにNi/Cu(111)およびTiO_<2-y>/TiO_2(110)系の光電子分光実験を行った。 Ni/Cu(111)においては、低温での蒸着により表面adatom系を作成し、さらに室温での蒸着によりNiを表面第一層に埋め込んだ二次元合金系を作成した。貴金属表面上の遷移金属原子は、理想的なアンダーソン不純物として、孤立原子とバルク中に埋め込まれた不純物との中間的な性質を持つと期待される。電子状態の観点からは、バルク中でもほとんど孤立原子的な性質を保つ希土類化合物中の4f状態との関連が予想されてきた。我々は、Ni adatomの3dピークがフェルミ準位のごく近傍に現れる様子を観察し、遷移金属adatomの3d状態がバルクのYb化合物の4f状態に定量的に近いことを明らかにした。このNiの3dピークは、Ni原子をCuの表面第一層に埋め込むと、不純物-母体間の相互作用の増大に伴なって、大きくフェルミ準位から離れる方向に移動した。 一方、TiO_2は広いギャップを持つ絶縁体であり、Tiの電子配置はd^0であるが、酸素欠損の導入によりd^1状態が現れる。したがって、TiO_<2-y>/TiO_2(110)系においては、表面層だけに束縛された二次元d電子系を作成することができる。酸素欠損量を少しずつ増加させると、フェルミ準位近傍の広いギャップ内にピーク状のTi 3dスペクトルが現れた。ピークの強度の増加とともに、ピークの幅も増加し、二次元ランダム格子ハバードモデルにおいて、移動積分tが増加する様子が実験的に明らかになった。
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[Publications] T.Susaki, T.Komeda, M.Kawai: "Narrow Photoemission Peak at the Fermi Level in Fe/Cu(111)"Physical Review Letters. 88,18. 187602 (2002)