高温超伝導体・有機物超伝導体の各種輸送現象における非フェルミ液体的挙動の理論

2001 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 13740202
• Research Category: Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
• Research Institution: Saitama University
• Principal Investigator: 紺谷 浩 埼玉大学, 理学部, 助教授 (90272533)
• Keywords: 酸化物高温超伝導体 / 有機物超伝導体 / 輸送現象 / 反強磁性揺らぎ / 超伝導揺らぎ / 非フェルミ液体的挙動 / 久保公式 / バーテックス補正

Research Abstract

1.高温超伝導体における磁気抵抗、磁場中輸送係数:高温超伝導体では広い温度領域で磁気抵抗Δρ/ρがT^<-4>に比例し、Kohler's ruleは完全に破れている。さらに磁気抵抗、ホール係数、電気抵抗の三者の間に成立するmodified Kohler's rule:Δρ・ρ∝R_H^2=const.は、この系の磁気抵抗とホール係数の異常の背後に共通のメカニズムが存在する事を強く示唆する。そこで本研究では、磁気抵抗を必要なバーテックス補正をとり入れる手法で研究し、この未解明の現象の理論的解明に着手した。まず、久保公式に基づき緩和時間τに関する最強発散項(O(τ^3))に関して厳密な磁気抵抗の一般的表式の導出に初めて成功し、conserving approximationに基づく磁気抵抗の計算方法を確立した。次に、その表式に基づき数値計算的研究を行い、modified Kohler's ruleを満足に再現するという結果を得た。その際、カレントに対する多体効果であるバーテックス補正項が、非フェルミ液体的挙動をもたらすことが明らかになり、磁気抵抗に関する謎は解明された。本研究により、高温超伝導における異常な(磁場中)輸送現象は、反強磁性相関の効果としてフェルミ液体の立場から理解できることが明らかになった。
2.高温超伝導体における熱起電力の理論:高温超伝導体では、熱起電力(S)やネルンスト係数などの熱・電気的輸送係数も顕著な異常を示すことが知られている。たとえば熱起電力は、通常金属では広い温度領域でS∝Tとふるまう。しかし高温超伝導体のSは、擬ギャップ温度T以上の高温領域では降温につれて発散的な振る舞いを示し、そのメカニズムが長年謎であった。まず我々はLuttingerの線形応答理論に基づき、0(τ)に関する厳密な熱起電力の一般的表式の導出に成功した。その際、局所的エネルギー保存則から導かれるWard恒等式を適用して、電子相関がある場合でも絶対零度まで正しい答えを与える公式を得ている。次に得られた表式に基づき、FLEX近似の範囲で必要なバーテックス補正をすべて取り入れる手法で数値計算を行い、その結果ホールドープ系ではS>0,一方電子ドープ系ではS<0という、実験結果と一致する結論を得た。

Research Products

• [Publications] H.Kontani: "Theory of Thermoelectric Power in High-Tc Superconductors"J.Phys.Soc.Jpn. 70. 2840-2843 (2001)
• [Publications] H.Kontani: "Magnetoresistance in High-Tc Superconductors: The Role of Vertex Corrections"J.Phys.Soc.Jpn.. 70. 1873-1876 (2001)
• [Publications] H.Kontani: "General Formula for the Magnetoresistance on the Basis of the Fermi Liquid Theory"Phys.Rev.B. 64. 054413-1-054413-19 (2001)
• [Publications] H.Kontani, H.Kino: "Theory of the Hall Coefficient and Resistivity for the Layered Organic Superconductors kappa-BEDT-TTF"Phys.Rev.B. 63. 134524-134531 (2001)
• [Publications] H.Kontani, K.Kanki, K.Ueda: "Hall Effect in High-Tc Superconductors"J.Phy.Chem.Sol.. 62. 83-87 (2001)