2002 Fiscal Year Annual Research Report
中性子散乱による低次元スピンギャップ系の励起状態の研究
Project/Area Number |
13740205
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿曽 尚文 東京大学, 物性研究所, 助手 (40313118)
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Keywords | 中性子回折 / 中性子非弾性散乱 / スピンギャップ系 / 低次元磁性 / 磁気励起 / ダイマー / SrCu_2(BO_3)_2 / フォノン |
Research Abstract |
隣り合うスピン1/2のダイマーが直交する"新しい二次元スピンギャップ系"SrCu_2(BO_3)_2のスピンギャップの励起状態及び量子相転移の解明を目指した研究である。具体的には「1、5meV付近にある2つ三重項ペアの励起の解明」、「2、ゼロ磁場近傍・高圧力下における量子相転移の観測」が研究目的であった。経過・成果は以下の通りである。 1、平成13年度の高エネルギー分解能の中性子非弾性散乱実験の結果、波数依存性がない幾つかの励起の集合であることが分かっている。波数依存性がない理由として格子系との結合が考えられるため、フォノンの測定を行った。主要な方向の幾つかの音響及び光学フォノンを観測した。そのうち、室温から温度を下げていくとハード化する光学フォノンが5meV付近に存在することが分かった。ギャップが形成される低温ではそのフォノンエネルギーは分解能の範囲内で変化しない。現時点で、磁気励起との結合は自明ではなく、より高エネルギー分解能の実験が必要との結論を得た。 2、宮原らの理論計算によると、SrCu_2(BO_3)_2のダイマー相は二次元正方格子の反強磁性相の近傍に存在し、Milaらの計算だとその磁気構造は非整合なものであり、古賀らの計算では反強磁性相との間にRVBプラケット相が存在する。これまで中性子回折実験がないので、理論との比較を試みるため2.5GaPまでの高圧力下で主要な散乱面にて中性子回折実験を行った。しかし、現時点では全く磁気ブラッグ反射は観測されない。より高圧及びSN比のよい圧力セルを用いた研究が必要と考えられる。 平成14年度では、1,2の目的は完全に達成されたと考えられず、今後の課題と考えられる。また、擬一次元スピンギャップ系NaV_2O_5の磁気励起により擬一次元方向の相互作用の大きさを明らかにした。
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Research Products
(1 results)