2001 Fiscal Year Annual Research Report
d及びf電子系における軌道自由度と異常秩序相の研究
Project/Area Number |
13740222
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
椎名 亮輔 東京都立大学, 理学研究科, 助手 (30326011)
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Keywords | 強相関電子系 / 四重極 / 多重極 / 軌道 / ゆらぎ / CeB_6 / V_2O_3 |
Research Abstract |
本研究では、現実のd及びf電子系化合物に広く見出されている、軌道の秩序化、磁性との共存、そして強い揺らぎなどの現象の微視的起源について、理論的な立場から精密な知見を得ることを日的としている。本年度は、典型物質であるCeB_6、V_2O_3を取り上げ、以下の研究を行った。 CeB_6の四重極相転移については、ここ数年の集中的な研究によって平均場描像が確立し、隠れた秩序変数としての八重極モーメントの重要性が明らかになっている。一方で、物理量の温度や磁場変化は、転移点近傍での大きな揺らぎの存在を示しており、定量的に見ると平均場解からのずれは小さくない。こうした多自由度の競合による揺らぎの効果を詳しく調べるため、相転移のランダウ理論の立場で、自由エネルギーの平均場解からのd^<-1>補正を計算した。弱磁場領域では、確かに大きな揺らぎが存在し、転移温度を大幅に下げることを示した。また、エントロピー、比熱、秩序変数などに対する揺らぎの効果を詳しく調べ、実験との比較を行った。揺らぎの磁場依存性を適切に取り込むことで、平均場理論に比べて、実験との定量的な一致が大幅に改善されることが示された。このことから、CeB_6が興味深い多重極秩序を示すのみでなく、その競合からくる大きな軌道揺らぎを有する大変ユニークな系であることが示された。 V_2O_3は、既に半世紀以上にもわたる長い研究の蓄積があるが、最近再びその軌道自由度に関して大きな注目を集めている。我々は、V_2O_3の複雑な磁気構造の起源とVの軌道状態を明らかにするために、現実的なモデルから本質的でない自由度を消去した有効モデルを導く作業に取り組んだ。その結果、複数のVイオンが関与した新奇な分子軌道の形成が問題の鍵である事が明らかになった。V_2O_3に対応するパラメータ領域で、複雑な磁気構造がこの分子軌道秩序とともに安定相となることが示され、同時に磁気異方性や有効スピン間相互作用などについて、実験との定性的一致を得た。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] R.Shiina, F.Mila, F.C.Zhang, T.M.Rice: "Atomic Spin, Molecular Orbitals, and Anomalous Antiferromagnetism in Insulating V_2O_3"Physical Review B. 63. 1444221-14442216 (2001)
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[Publications] R.Shiina: "Quadrupolar Phase Transition and Field-Dependent Multipolar Fluctuation in CeB_6"Journal of Physical Society of Japan. 70. 2746-2756 (2001)
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[Publications] R.Shiina, F.Mila, F.C.Zhang, T.M.Rice: "Theory of Molecular Orbital Ordering and Anomalous Antiferromagnetism in V_2O_3"Physica B. (To be published).
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[Publications] R.Shiina: "Theory of Field-Dependent Multipolar Fluctuation in CeB_6"Journal of Physical Society of Japan Supplement. (To be published).