2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13740237
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
押川 正毅 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (50262043)
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Keywords | 量子ダイナミクス / ESR / 量子スピン系 / 強相関電子系 / スピン電荷分離 / ゲージ理論 |
Research Abstract |
1 電子スピン共鳴(ESR)の理論 ESRは、磁性体の性質を調べるための重要な実験手段であり、多体系のダイナミクスの問題として理論的にも興味深い。しかし、従来の理論は非自明な仮定に立脚しており、その正当性が明確でない。また、特に量子ゆらぎの強い場合について吸収スペクトルを計算することは技術的に困難であった。本研究では、量子ゆらぎの非常に強い低温のスピン1/2反強磁性鎖のESRに対して場の理論に立脚した新しいアプローチを発展させた。それによれば、ESRの吸収スペクトルは場の理論におけるボソンの自己エネルギーに関連づけられる。その結果、KCuF_3やCuGeO3などの多くの物質における実験データを統一的に説明することができた。また、従来の理論の仮定が正当化される場合は、相関関数を場の理論によって正しく評価すれば、自己エネルギーによるものと正確に一致する結果を得ることも確かめた。一方、従来の理論が成立しない場合もあることも指摘した。実験的にも重要なDzyal oshinskii-Moriya相互作用に対しては、従来の理論をそのまま適用すると誤った答を得るため、まずゲージ変換によって消去しなくてはならないことなどを明らかにした。 2 強相関電子系におけるゲージ理論とスピン電荷分離 Hubbardモデルに代表される強い相互作用をする電子系は、理論物理学基礎的な問題としても、また高温超伝導に代表される興味深い物性を理解するうえでも重要な問題である。スピン電荷分離のシナリオを記述する理論として、ゲージ理論が提案されてきた。これは、電子を電荷を運ぶホロンとスピンを運ぶスピノンの複合粒子として考え、これらの間にゲージ場を介した相互作用が働くと考える理論である。本来ホロンはスピノンと一体となり電子を形成しているが、これはゲージ理論の閉じこめ相に対応する。一方、低エネルギー有効理論ではゲージ理論が弱結合となり非閉じこめ相が出現し、ホロンとスピノンが分離するというのがこの理論のシナリオである。しかし、最近Nayakは「ホロン」と「スピノン」の間の電荷の分配に任意性があることを指摘し、これらが分離することはあり得ないと論じた。本研究では、Nayakの指摘とゲージ理論を再検討し、仮に「ホロン」と「スピノン」がゲージ理論の仮定どおり分離したとすると、その実効的な電荷はゲージ場のダイナミクスによって決定され、分配の任意性によらないことを明らかにした。分離した粒子は、今まで考えられていたのと異なり、一般に分数電荷を持つことになる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Masaki Oshikawa, Ian Affleck: "Electron spin resonance in S=1/2 antiferromagnetic chains"Physical Review B. (印刷中).
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[Publications] 押川 正毅: "スピンと磁性-スピンの量子性はいかに発現するか-"数理科学. 457. 29-36 (2001)