2001 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア前弧域における深海生物化石相の多様性-新生代における物質循環との関係-
Project/Area Number |
13740298
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
延原 尊美 静岡大学, 教育学部, 助教授 (30262843)
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Keywords | 古生物学 / 古生態学 / 新生代 / 軟体動物化石 / 漸深海帯 / 生物多様性 / 泥質岩 / 物質循環 |
Research Abstract |
鮮新-更新統の多様な深海底生動物化石相の記載と,各生息場の物質循環における位置づけを解明するために,これまでデータの蓄積がある静岡県掛川地域,宮崎県宮崎平野,沖縄本島中部〜南東部に加えて,宮古島南東部を中心に補足調査を行った.同島南東部には鮮新統の沖合泥質層が広く分布しているが,極端に高い種多様性を示す貝化石群集を産する砂質シルト岩層と種多様性の低い貝化石群集を産する細粒シルト岩層とが互層することが明らかにされた.多様性の高い群集には,堆積物食者に加え濾過食者および肉食者が個体数は少ないながら多種加わっており,二枚貝類35種,巻貝類39種,角貝類3種の総計77種を同定するに至った.また堆積物を解析した結果,種の多様性の高い群集を産する砂質シルト岩は周囲の細粒シルト岩に比べて,約500倍の量の浮遊性有孔虫化石を含んでおり,表層海域からの有機物粒子の高いフラックスが底生動物相の種多様性にも影響をおよぼしていることが示唆された. また現生の深海性軟体動物相についても,旧地質調査所がGH97航海において駿河湾-遠州灘海域で行ったグラブ採泥試料より貝類遺骸を分別し種多様度を比較し,物質運搬過程との関連性を検討してみた.その結果,西南日本前弧域の鮮新-更新統でこれまで認められた貝化石群集に類似した種構成をもつ貝類遺骸が認められ,半深海-深海環境のなかでは,上部陸棚斜面の環境においてもっとも種の多様性が高いことが確認された.この群集は濾過食者の二枚貝種,肉食者の巻貝種が数多く加わっていることで特徴づけられる.同海域は陸域および表層海域からの有機物フラックスの高い海域であると考えられ,沖合の軟泥底の底生動物群集の多様性には,餌となる有機物の供給が関連していることが示唆された.
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