Research Abstract |
本研究の主たる目的は,地球環境変動や埋没変成作用の指標として重要な研究対象である天然雲母粘土鉱物の結晶成長過程・機構,結晶構造・化学組成の変化に関する新しい解釈・モデルを提示し,また,その応用として特に地球の古気候変動の復元を試みることにあった.最終年度である本年度は,前者に関係する実験を進展させるとともに,特に後者の研究目的に対して実験及び考察を進めた.以下に本年度の研究実績を概要する. 1.前年度の雲母粘土鉱物の原子間力顕微鏡観察は,主として最も変質の強い試料を対象に行ったが,本年度は,やや変質の弱い試料に注目した.その結果,変質の違いは,(1)ポリタイプ,(2)結晶成長模様(ステップの形態,ステップ間隔),(3)粒子の形態,等に影響する事がわかった.特に,ポリタイプの違いは歴然であり,それが,温度に起因するのか?溶液の過飽和度に起因するのか?については理解できておらず,今後の課題となった.ただし,ステップ間隔から判断すると,結晶成長模様および粒子形態の変化は,溶液の過飽和度の違いにより影響されると思われる. 2.ネパール・カトマンズ盆地堆積物中の粘土鉱物,特に,イライト(雲母粘土)鉱物の結晶構造変化の特性に注目して,本地域の最近のモンスーン変動の復元を試みた.本地域の乾燥-湿潤変動の復元のために,埋没変成作用の指標として開発されたLanson指標を応用することに初めて成功し,本地域が,寒冷気候の時期にはおおよそ乾燥し,温暖な気候の時期は湿潤な気候が優勢であった事が推定された.しかしながら,前者においては,必ずしも乾燥気侯が全般に支配していたのではなく短い期間の湿潤化が認められ,後者においても湿潤気候に合間に短な乾燥化が何度かあり,細かく変動している事が確認された. これらの研究成果については,すでに幾つかの論文で公表,あるいは公表予定である(裏面,研究発表を参照).
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