2001 Fiscal Year Annual Research Report
モデル星間分子を用いた衝撃反応とその宇宙科学的意義
Project/Area Number |
13740314
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三村 耕一 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 助手 (80262848)
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Keywords | 衝撃反応 / 有機物 / フェナントレン |
Research Abstract |
フェナントレンを出発物質として衝撃反応を行い,生成物をガスクロマトグラフィー,ガスクロマトグラフ質量分析計ならびに元素分析計で分析した.フェナントレンは隕石中に検出されているとともに,星間分子や星間塵中に存在が強く示唆されている有機物である.実験の結果,衝撃を被った試料はフェナントレン,それ以外の芳香族炭化水素(PAHs),無定形炭素を含んでいた.これらのPAHs(出発物質の二量体の存在度が最も大きかった)や無定形炭素は衝撃波がフェナントレンに作用した結果,生成したものである.衝撃を被った試料と衝撃圧力の関係をまとめると以下のようになる. 1. 衝撃を被った試料の炭素元素に対する水素元素(H/C)比は衝撃圧力の増加に伴って減少する, 2. 衝撃を被った試料のPAHs量は25GPaまで増加するがその後急激に減少する, 3. 衝撃を被った試料中のフェナントレン量は25GPaまで徐々に減少するがその後急激に減少する. これらの結果をもとに, 衝撃反応の反応機構を考察すると,衝撃反応は出発物質が水素を放出してより水素に乏しい物質に変化する脱水素反応であることが判る. さらに,2つのフェナントレン分子から1つの水素分子が抜けて二量体が生成する付加反応が優勢な反応であることも判る. また,本実験の高圧力領域においては,無定形炭素よりもダイヤモンドが安定な領域であるにもかかわらず,ダイヤモンドの存在は確認されなかった. このことは,出発物質の化学的・物理的性質が衝撃反応におけるダイヤモンドの生成に影響していると考えられる. 出発物質を変化させ基礎的情報をさらに増やすことで,衝撃反応の研究は純粋化学や宇宙化学に対して大きな貢献をし得ることが期待される.
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