2002 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内の脂質セカンドメッセンジャーの蛍光プローブ分子
Project/Area Number |
13740419
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 守俊 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (00323501)
|
Keywords | 脂質セカンドメッセンジヤー / 蛍光プローブ / ホスファチジルイノシトール-3,4,5-三リン酸 / 蛍光共鳴エネルギー移動 / エンドサイトーシス / GFP / PIP_3 / FRET |
Research Abstract |
細胞内の主要な脂質セカンドメッセンジャーであるホスファチジルイノシトール-3,4,5-三リン酸(PIP_3)を,蛍光顕微鏡下の単一細胞で可視化分析するために新規蛍光プローブ分子(fllip:フリップ)を開発した.FllipはPIP_3と結合するドメイン(LBD:Lipid binding domain)とオワンクラゲ由来の緑色蛍光蛋白質の2つの異色変異体(シアン色蛍光蛋白質と黄色蛍光蛋白質)からなる.このfllipは蛋白質からなる蛍光プローブ分子なので,まずfllipをコードするcDNAを作成し,培養細胞に導入したところ半日程度で細胞から蛍光が観察されfllipが蛋白質発現されたことが分かる.Fllipに特定の膜局在化アミノ酸配列を連結すると,fllipを細胞内の特定局所膜系にのみ配置でき,これによりそれぞれの特定の膜系におけるPIP_3の量的変化を可視化できる期待できた.本研究では細胞膜(形質膜)と,小胞体膜・ゴルジ体膜にfllipを配置し,PIP_3の濃度変化を追跡した.これにより,1)血小板由来成長因子(PDGF)などのペプチドホルモン刺激により,PIP_3が細胞膜のみならず小胞体膜やゴルジ体膜などendomembraneで大量に増加することを見いだした.また,2)このendomembraneでのPIP_3は,エンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれたチロシンキナーゼ受容体に刺激されてendomembrane上で生合成されたものであることを明らかにした.本法はPIP_3のみならずその他の脂質セカンドメッセンジャーにも応用可能な一般的方法論である.例えば脂質セカンドメッセンジャーと結合するLBDを選ぶことにより,ジアシルグリセロールやホスファチジルイノシトール-3-一リン酸を検出する蛍光プローブへとテーラーメイドできる.また,fllipに連結した膜局在化アミノ酸配列を選ぶことにより,本研究で示した細胞膜,小胞体膜,ゴルジ体膜のみならず,核膜,ミトコンドリア膜など各種オルガネラ膜における脂質セカンドメッセンジャーを選択的に可視化検出できると期待される.
|