イヌ神経伝達物質関連遺伝子の多型解析と有用犬選別への応用性の検討

2001 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 13740427
• Research Category: Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
• Research Institution: Gifu University
• Principal Investigator: 村山 美穂 岐阜大学, 農学部, 助手 (60293552)
• Keywords: ドーパミンD4受容体遺伝子 / イヌ / 反復配列 / 多型 / 行動特性 / 他犬への攻撃性 / 麻薬探知犬 / 食肉目

Research Abstract

本研究では,ヒトで行動特性との関連が報告された脳内物質関連遺伝子多型をイヌで解析し,イヌの行動特性の遺伝的背景を探ることを目的としている。本年度は,ドーパミンD4受容体遺伝子に関して犬種内,犬種間の比較を行った。
ドーパミンD4受容体対立遺伝子頻度の犬種差:犬種あたり4個体以上の遺伝子型データが得られた,31犬種,計860頭について,対立遺伝子頻度に基づく主成分分析を行った。9種類の対立遺伝子が識別され,447a, 447b, 435, 498の頻度分布が犬種差に寄与していることが示された。原産地により対立遺伝子の頻度分布に差異があり,アジア原産の犬種は447bを,ヨーロッパ原産の品種は447aを高頻度に保有していた。
Hartらによる犬種の行動特性評価にもとづき,13の行動特性スコアと対立遺伝子頻度との相関を求めた。498と「他犬への攻撃性(r=+0.595, P<0.001)」や「反抗性(r=+0.544, P<0.01)」といった"攻撃性"に分類される行動特性との関連が強く示唆された。この498を高頻度に保有するグループには,高い攻撃性を求められる狩猟犬・番犬の用途で作出された犬種が多く含まれており,攻撃性の低いことが要求される牧羊犬,回収犬は含まれていなかった。
同一犬種内での遺伝子型と行動特性の関連性:麻薬探知犬(ラブラドールレトリバー)63個体の遺伝子型を調べ,合否,訓練成績,行動特性評価との関連を解析した。特定の対立遺伝子と「臆病」「他犬への攻撃性」「人懐こさ」との関連が見いだされた。
食肉目各種における遺伝子塩基配列の比較:イヌの反復配列多型の起源を明らかにするため,食肉目各種(オオカミ,タヌキ,クマ,アライグマ,ネコ)の相同領域の塩基配列を比較した。イヌ科のオオカミ,タヌキでは反復領域が見いだされた。一方,イヌ科以外の動物では反復構造は認められなかった。

Research Products

• [Publications] 井上(村山)美穂 他: "アジア在来犬のドーパミンD4受容体遺伝子多型(予報)"在来家畜研究会報告. 19. 133-143 (2001)
• [Publications] Inoue-Murayama M. et al.: "Chicken microsatellite primers are not efficient markers for Japanese quail"Animal Genetics. 32・1. 7-11 (2001)
• [Publications] Niimi Y. et al.: "Breed differences in allele frequency of the dopamine receptor D4 gene in dogs"Journal of Heredity. 92・5. 433-436 (2001)
• [Publications] 新美陽子 他: "イヌにおけるドーパミン受容体D4遺伝子多型領域の解析"DNA多型. 9. 100-104 (2001)
• [Publications] Shibusawa M. et al.: "Chromosomal localization of two Z chromosome-specific DNA fragments (DZGif1 and DZGif2) in Japanese quail"Animal Science Journal. 72・5. 431-433 (2001)
• [Publications] 井上(村山)美穂 他: "イヌにおけるドーパミン受容体D4遺伝子多型と行動特性との関連"DNA多型. 10. (2002)
• [Publications] 井上(村山)美穂: "霊長類の行動を遺伝子から見る"河出書房新社. 127 (2002)