2001 Fiscal Year Annual Research Report
構成因子の探索による酵母GSK-3シグナル伝達系の解析
Project/Area Number |
13740428
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
安東 知子 広島大学, 医学部, 助手 (20294548)
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Keywords | 酵母 / 遺伝学 / 分子生物学 / リン酸化酵素 / ストレス |
Research Abstract |
GSK-3は広く真核生物に保存された蛋白質リン酸化酵素であり、高等動物の発生、分化、および転写調節等、複数のシグナル伝達系に関与する。多機能蛋白であるGSK-3の機能を明らかにするためには、GSK-3シグナル伝達系に関わる複数の構成因子との相互作用を同時に解析していく必要がある。我々は酵母を用いてGSK-3と遺伝学的に相互作用する因子を多数得ていた。今年度は、これらのうちRog3とMsn2について主に解析を行なった。 Rog3はgsk-3変異株の温度感受性を抑圧する変異から得られ、ユビキチンライゲースRsp5と結合したが、Rog3のホモログであるRod1もまたRsp5と結合することが明らかになった。Rog3とRod1はともにPYモチーフをもつが、Rod1のPYモチーフに変異を導入するとRsp5との結合が減弱した。Rog3やRod1を高発現させると酵母はo-dinitrobenzeneに耐性になったが、PYモチーフに変異を導入したRod1を高発現させても酵母はo-dinitrobenzeneに耐性を示さなかった。rsp5変異株がo-dinitrobenzeneに感受性を示したことから、Rog3およびRod1がRsp5を制御することによって薬剤耐性に影響を及ぼす可能性について現在検討中である。また、これらの系とGSK-3との関わりについても検討する予定である。 Msn2はgsk-3変異株の増殖遅延を多コピーで抑圧する遺伝子として得られた。Msn2は温度や塩などのストレスに応答して核に移行し、複数の遺伝子の上流に存在するSTRE配列(stress responsive element)に直接結合して遺伝子の転写を促進する転写因子である。レポーター遺伝子を用いた解析から、gsk-3変異株ではSTREからの転写が低下していることが明らかになった。gsk-3変異株ではMsn2の局在は正常であったが、Msn2とSTRE配列との結合が弱くなっていることがゲルシフトアッセイから示唆された。従って、GSK-3はMsn2とSTRE配列との結合を制御することでストレス応答に深く関わると考えられる。
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