2002 Fiscal Year Annual Research Report
温暖化と標高差に伴う環境変化が高山植物の繁殖様式に及ぼす影響
Project/Area Number |
13740438
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
和田 直也 富山大学, 理学部, 助教授 (40272893)
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Keywords | 高山植物 / 花粉発芽 / 花粉管伸長 / 温度依存性 / 風衝地 / 雪田 / バラ科 / 種子発芽 |
Research Abstract |
1.前年度得られた成果を、本年度ソウルで開催された国際生態学会で口頭発表した。 2.本年度は、周北極植物チョウノスケソウの開花結実繁殖様式を調べる予定であったが、調査地における開花個体数が例年に比較して非常に少なかったため、当初の調査予定を変更し、チョウノスケソウを除くバラ科高山植物の花粉発芽の温度依存性を明らかにすることを第一の目的とした。次に、少数ながら採取できたチョウノスケソウの種子を用い、同科雪田植物のチングルマの種子と比較することで、両種の発芽特性と温度依存性を明らかにすることを第二の目的とした。富山県立山山地で採取したサンプルを実験室内の恒温器で培養・栽培し、以下に示す結果を得た。 3-1.周北極植物ではないが、チョウノスケソウと同所的に生育しているバラ科の風衝地高山植物、ミヤマダイコンソウおよびミヤマキンバイと同科雪田植物であるチングルマについて、花粉発芽の温度依存性を調査した。その結果、花粉の発芽率および花粉管の伸長量ともに、風衝地植物であるミヤマダイコンソウは最適温度がともに低く10℃〜15℃であった。それに対し、同科雪田植物であるチングルマは、前年の結果と同様に最適温度が20℃であることが確かめられた。風衝地にも雪田地にも生育しているミヤマキンバイでは、前記両種の中間的なパフォーマンスを示した。これらのことから、風衝地に生育している植物は周北極植物に限らず、花粉の発芽と花粉管伸長の最適温度が雪田植物よりも低く、開花時の低温環境に適応している可能性が示唆された。 3-2.周北極植物・風衝地植物であるチョウノスケソウは、低温湿潤処理を行わなくとも種子が発芽することが分かった。チングルマは低温湿潤処理を行わなければほとんど発芽しなかった。また種子の最適発芽温度はチョウノスケソウの方が5℃低かった。30℃以上の高温環境では、チングルマの種子の方が耐性が高かった。以上のことより、花粉および種子の発芽ともに、風衝地植物はより低温環境に雪田植物はより高温環境に適応していることが示唆された。従って、温暖化がそれぞれの種の繁殖成功に及ぼす影響も異なることが予想された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Naoya Wada: "Warming effects on shoot developmental growth and biomass production in sympatric evergreen alpine dwarf shrubs Empetrum nigrum and Loiseleuria procumbens"Ecological Research. 17. 125-132 (2002)
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[Publications] Naoya Wada: "Variations of temperature-dependent pollen germination and pollen tube elongation in an alpine plant Sieversia pentapetala along the altitudinal gradient and under the simulated environmental change"Proceedings of the VIII INTECOL International Congress of Ecology. 8. 280 (2002)