2001 Fiscal Year Annual Research Report
中国南部に分布する洞窟棲淡水魚類の分子系統と適応進化
Project/Area Number |
13740489
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
渡辺 勝敏 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (00324955)
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Keywords | 中国 / 洞窟 / コイ科 / Sinocyclocheilus / 分子系統 / 遺伝的集団構造 / ミトコンドリアDNA / 遺伝的多様性 |
Research Abstract |
本課題は,中国南部の洞窟地帯で大きく分化を遂げている洞窟棲淡水魚類Sinocyclocheilus属(コイ科)の系統進化と適応に関して分子系統学的にアプローチするものである.第1年度である本年は,まず実験施設の整備を進めた上で,11月に約1ヶ月間,中国貴州省,雲南省,広西壮族自治区において野外採集調査を行った.そして,得られた標本の分子系統解析の第1段階をとり行い,一定の成果を得た. 野外調査は中国科学院動物研究所(北京)の全面的な協力のもとで行われ,数百kmスケールに含まれる14地域,計18カ所の洞窟を訪れ,9カ所でSinocyclocheilus属魚類を採集することができた.この中には,形態的に様々な程度に洞窟適応した,少なくとも10集団(種・亜種)が含まれていた.また同所的・同地的に3集団が生息する場所もあった. 分子系統解析の第1段階として,まず,ミトゴンドリアDNAの非コード領域(調節領域)とシトクロームb遺伝子領域の部分塩基配列を19〜40個体について決定した.採集時に推察された生息地の環境容量や集団内の遺伝的多様性から,少なくともいくつかの集団(種)は大きな集団サイズを有していると考えられた.また,配列データから推定された集団間の系統類縁関係から,まず採集地と形態から区別された集団が単系統であること,いくつかの形態的に類似した各地の集団間に遺伝的な類縁関係が認められること,また同地域に系統的に離れた集団が生息することなどが明らかになった. 次年度に追加標本の採集,形態的分化・特化の定量化および分子系統解析を進めることにより,本グループの洞窟への侵入,隔離,分散の過程をより明確にし,洞窟適応に際する形態・分子進化の関係についての考察を深める予定である.
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