2002 Fiscal Year Annual Research Report
中国南部に分布する洞窟棲淡水魚類の分子系統と適応進化
Project/Area Number |
13740489
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
渡辺 勝敏 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (00324955)
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Keywords | 洞窟棲コイ科魚類 / Sinocyclocheilus / 中国雲貴高原 / 遺伝的多様性 / 系統地理学 / 分子系統 / ミトコンドリアDNA / AFLP |
Research Abstract |
中国南部雲貴高原の石灰岩洞窟地帯に分布するコイ科魚類Sinocyclocheilus属は,さまざまな程度に洞窟適応した,種多様性の高い系統群である.本研究では,2度にわたって,貴州省,雲南省,広西壮族自治区で野外調査・標本採集を行ない,11地域の15地点から計18集団(種または下位分類群)を採集し,ミトコンドリアDNA (mtDNA)塩基配列分析とAFLP分析により,分子系統学および集団遺伝学的解析を行なった.採集された集団には,体色の白化したもの,目がさまざまな程度に退化したもの,背鰭前の背部が隆起し突起状になったものなど,さまざまな特化段階のものを含み,またいくつかの未記載種と判断されるものも含まれていた.mtDNAの部分塩基配列(約1600塩基対)に基づく分子系統樹から,本属には少なくとも6つの系統群が含まれ,その多くが,それぞれ洞窟周辺に棲息する好洞窟性の集団から,目の欠失などの典型的な洞窟適応を示す集団までを含んでいた.mtDNAの部分配列(約500塩基対)データやAFLP分析から,遺伝的多様性が低い集団が存在する一方,真洞窟性を含む多くの集団はある程度高い多様性を保持していることも明らかになり,広大な地下水系に比較的大きな集団として歴史的に存在してきたことが示唆された.系統地理パターンと洞窟への特化程度を合わせて考えると,古い時代に洞窟適応したグループと,比較的最近に好洞窟性の集団が広範に分散し,各地で真洞窟性集団として適応したグループが存在することが示唆された.
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Zhang, C-G., P.Musikasinthorn, K.Watanabe: "Channa nox, a new channid fish lacking a pelvic fin from Guangxi, China"Ichthyological Research. 49・2. 410-416 (2002)
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[Publications] Watanabe, K., C.-G.Zhang, Y.-H.Zhao: "Redescription of the East Asian bagrid catfish, Pseudobagrus kyphus Mai, 1978, and a new record from China"Ichthyological Research. 49・4. 384-388 (2002)
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[Publications] Watanabe, K., S.Mori, M.Nishida: "Genetic relationships and origin of two geographic groups of the freshwater threespine stickleback, 'Hariyo'"Zoological Science. 20・2. 265-274 (2003)
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[Publications] Kubota, H., K.Watanabe: "Genetic diversity in wild and reared populations of the Japanese bitterling, Tanakia tanago (Cyprinidae)"Ichthyological Research. 50・2(印刷中). (2003)
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[Publications] Watanabe, K., M.Nishida: "Genetic population structure of Japanese bagrid catfishes"Ichthyological Research. 50・2(印刷中). (2003)
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[Publications] 渡辺勝敏, 西田 睦: "淡水魚類(小池裕子・松井正文編, 『保全遺伝学』)"東京大学出版社(印刷中). (2003)