2002 Fiscal Year Annual Research Report
導電性フィラーを含有する熱可塑性樹脂の熱/電気特性に関する伝熱学的見地からの研究
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13750165
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
斉藤 卓志 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (20302937)
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Keywords | 熱可塑性樹脂 / 微細炭素粉 / 体積抵抗率 / 電界強度 / 平均粒子間距離 / バリスター特性 / 電荷移動 |
Research Abstract |
本年度は,導電性フィラーを含有する熱可塑性樹脂材料の導電特性に対して踏み込んだ議論を行うために,材料中の電荷移動を支配すると考えられる電界強度とフィラー間平均距離の影響を詳細に検討した.供試材料は前年度と同様,フィラーの分散性を良好にするべく改質されたポリカーボネート中に微細な炭素粉(平均粒子径は数十nm,以下CB)を微分散させた厚さ100μmのシート材を使用した.ただし,CB濃度が6,7,8wt.%の三種類の試料を用意した.また,材料の体積抵抗率測定についても,昨年同様,高抵抗測定手法であるASTMD-257規格に基づく系を採用した.実験条件としては,印可電圧を100〜1000V,シートを重ねることにより試料厚さを100〜400μmに変化させるとともに,CB濃度の違いによる平均CB粒子間距離の影響を検討した.材料の体積抵抗率に対する試料厚さと印可電圧の影響について,電界強度(印可電圧/試料厚さ)を指標とすることで整理できることを確認した,この結果を踏まえ,電界強度を独立変数軸とするグラフ上において,CB濃度の違いによる体積抵抗率の変化について考察を与えた.すなわち,溶融樹脂材料において広く知られているWLF則(温度と時間の等価性に対する換算則)と同様のアプローチにより,材料中を移動する電荷の移動し易さという視点からは材料に印可する電界強度とCB濃度に換算則が成立すると類推し,実際にデータの重ね合わせを試みた.その結果,印可電界強度の低い領域では,CB濃度に応じて体積抵抗率に大きな開きがあったにもかかわらず,印可電界強度の増加により急激に材料の体積抵抗率が低下する,いわゆるバリスター特性を示す領域において,良好なデータの重ね合わせが行えることを見出した.本研究で得られた結果は,導電性フィラーを含有する樹脂材料中における電荷移動,特にバリスター特性のような非線形現象に対する理解の一助となると考えられる.
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Research Products
(1 results)