Research Abstract |
乾燥熱風として大気圧の過熱水蒸気を用いる乾燥法を一般に過熱水蒸気乾燥と呼ぶ.本乾燥の初期には,過熱水蒸気が常温付近の被乾燥物と接触することにより被乾燥物表面で凝縮し,その凝縮水は再び過熱水蒸気中に蒸発する.これらの一連の非定常な相変化現象とその工業的応用について,実験ならびに数値計算により解析を行った. 平成13年度は,既存の実験装置改良により,乾燥熱風として過熱水蒸気に加えて高温高湿度の空気を用いた実験を行い,過熱水蒸気の凝縮から蒸発への非定常相変化現象について,被乾燥物の温度変化と相変化に伴う物質移動量の実測値を得た.また,これらの湿度の変化による影響について調べた. 平成14年度は,昨年までの成果をもとに,過熱水蒸気のみならず,通常の空気や高湿度空気を含む,広い湿度条件下で適用が可能な,処理初期の非定常相変化現象(反転過程)を数値計算により解析し,あわせて,反転過程の特性値の簡易な推算方法について検討を加えた.その結果,半無限固体モデルを用いた場合の解析から,過熱水蒸気条件下では解析解として凝縮時間と凝縮水が全て再蒸発するために必要な時間の比は1:3となるが,高湿度条件下では,露点温度と湿球温度に差異があることから,その比は1に対して湿度の低下に比例して3よりも大きくなることが確かめられた.同時に,湿度が低下するほど凝縮量が少なくなること,対流伝熱量が増加することから,凝縮水が全て再蒸発するために必要な時間は急激に短縮されることがわかった. また,昨年度に引き続き,本研究の工業的な応用例として,ジャガイモスライスの乾燥実験を,170℃,240℃の高温空気と過熱水蒸気中で行い,乾燥特性,着色,成分(澱粉の糊化)の変化を比較しながら,それぞれの乾燥法の特徴と,初期の凝縮から蒸発への反転過程がジャガイモに与える影響を調べ,食品栄養学の研究者との共同研究成果として報告した.
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