2002 Fiscal Year Annual Research Report
高分子絶縁材料中の不純物が絶縁特性に与える影響の解明と直流ケーブル用材料の開発
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13750285
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
平井 直志 早稲田大学, 理工学部, 講師 (30329122)
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Keywords | 低密度ポリエチレン / 架橋ポリエチレン / 電力ケーブル / 架橋構造 / 電荷トラップ / 絶縁劣化 / 空間電荷 / 脱気処理 |
Research Abstract |
上記の研究課題において、今年度得られた研究実績は以下の通りである。 (1)架橋ポリエチレン(XLPE)フィルムのみの空間電荷分布を測定したところ、低密度ポリエチレン(LDPE)中にアセトフェノンを浸透させた場合と同じ傾向を示した。このXLPEフィルムのフーリエ赤外吸収分光測定より、XIPE中には元々架橋剤分解残渣のうち少なくともアセトフェノンは残存しており、このアセトフェノンはXLPE中における空間電荷形成を支配していることがわかった。 (2)XLPE中に元々存在する架橋剤分解残渣を除去するため、約80℃で1週間の真空脱気処理を行ったXLPEフィルムのフーリエ赤外吸収分光測定より、架橋剤分解残渣のうち少なくともアセトフェノンは、XLPEフィルム中から除去できたことを確認した。これより、XLPE中に元々存在するアセトフェノン除去のためには、本実験条件で行った真空脱気処理は有効であることがわかった。 (3)未処理XLPEフィルムおよび脱気処理済みXLPEフィルム中にクミルアルコールが浸透した場合の空間電荷分布は、クミルアルコールが注入電荷をトラップすることによるホモ電荷の形成が見られたLDPEフィルムの場合と同じ傾向であった。これより、ポリエチレンの架橋構造はポリエチレン中におけるクミルアルコールの注入電荷トラップ作用に影響していないことがわかった。 (4)XLPEフィルム中にアセトフェノンが浸透した場合の空間電荷分布では、ヘテロ電荷の蓄積が見られた。これは、LDPE中にアセトフェノンが存在した場合、電荷の移動が促進されるとした結果を指示するものである。また、アセトフェノンは水分と共存することによりイオン性の電荷を形成するとした報告より、このヘテロ電荷の起源はアセトフェノンと水分の共存によるものであることがわかった。
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[Publications] N.Hirai etc.: "Chemical Group in Crosslinking Byproducts Reponsible for Charge Trapping in Polyethylene"Proceedings of the 2002 Conference on Electrical Insulation and Dielectric Phenomena. 626-630 (2002)
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[Publications] 平井 直志, 南亮太郎, 田中祀捷, 大木 義路, 岡下稔, 前野恭: "低密度ポリエチレン中の空間電荷形成に与る架橋剤分解残渣の化学基"平成14年誘電・絶縁材料、電線・ケーブル合同研究会資料. 7-12 (2002)
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[Publications] 平井直志, 前野泰正, 田中祀捷, 大木義路, 岡下稔, 前野恭: "架橋構造がポリエチレン中の空間電荷形成に与える影響"2002年電気学会基礎・材料・共通部門大会講演論文集. 295 (2002)
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[Publications] 平井 直志, 前野泰正, 田中祀捷, 大木 義路, 岡下稔, 前野恭: "脱気処理が架橋ポリエチレンの空間電荷分布形成に及ぼす影響"第34回電気電子絶縁材料システムシンポジウム予稿集. 197-200 (2002)
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[Publications] 平井 直志, 前野泰正, 田中祀捷, 大木 義路, 岡下稔, 前野恭: "架橋ポリエチレンの空間電荷形成に与える架橋構造の影響"平成15年放電、誘電・絶縁材料合同研究会資料. 51-56 (2003)
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[Publications] 前野泰正, 平井 直志, 田中祀捷, 大木 義路, 岡下稔, 前野恭: "架橋ポリエチレン中のホモ電荷トラップの及ぼすクミルアルコールの役割"2003年電気学会全国大会講演論文集. (発表予定). (2003)