2001 Fiscal Year Annual Research Report
可視領域に吸収を持つTiO_2薄膜の作製と電子状態計算による光機能性の解析
Project/Area Number |
13750627
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
小和田 善之 兵庫教育大学, 学校教育学部, 助教授 (90205542)
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Keywords | 分子軌道法 / DV-Xα法 / TiO_2薄膜 / 電子状態 / 光吸収 / 光触媒 / 光起電力 |
Research Abstract |
本年は、TiO_2薄膜および添加した不純物の電子状態について検討を行った。まず、不純物を含まない状態でのTiO_2薄膜の電子状態を算出するため、典型的なTiO_2結晶として知られているルチル型およびアナターゼ型について、モデルクラスターを構築し、その電子状態の検討を行った。その結果、ルチル型のモデルにおけるHOMO-LUMO間のエネルギーギャップは、3.6eV、アナターゼ型については4.23eVという値が得られた。実測値としては、ルチル型が約3.0eV、アナターゼ型では約3.2eVという報告があり、いずれのクラスターにおいても計算結果ではエネルギー差が0.6〜1eV程度大きくなる傾向を示した。これは有限個の原子からなるクラスターモデルを用いているためであるが、一方で、ルチル型に比べてアナターゼ型において、エネルギーギャップが若干大きくなるという傾向はよく再現されており、不純物の添加効果を議論するためには十分な精度の結果が得られていることがわかった。 次に、TiO_2膜中への不純物の添加効果を検討するため、モデルクラスター中のTiあるいはOイオンを、遷移金属イオンや種々のアニオンに置換したクラスターを作成し、不純物による電子状態の変化について検討を行った。第4〜第6周期遷移金属イオンによりTiサイトを置換した場合、TiO_2のバンドギャップ中に遷移金属イオンのd軌道を主成分とする準位が現れた。また、このような準位は、添加した遷移金属イオン周辺に非常に強く局在化していることも明らかとなった。ここで得られた結果は、遷移金属イオン添加により、可視領域に光吸収を持つTiO_2薄膜の作製が可能であることを示しているが、一方で、光吸収により遷移した電子は、遷移金属イオン周辺に局在化し、光起電力などには効果が期待できないことがわかった。 また、Oイオンを他のアニオンで置換したモデルでは、ほとんどの場合、バンドギャップなどに顕著な変化は見られなかった。唯一、Nイオンで置換した場合のみ、HOMOのエネルギーが上昇し、TiO_2のみの場合に比べてHOMO-LUMO間のエネルギー差が小さくなることがわかった。
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