2001 Fiscal Year Annual Research Report
歯科用Ti-6Al-7Nb鋳造合金の化学熱処理による高力学機能化
Project/Area Number |
13750654
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
赤堀 俊和 豊橋技術科学大学, 工作センター, 助手 (00324492)
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Keywords | α+β型チタン合金 / 歯科材料 / 水素吸脱処理 / 引張特性 / 疲労特性 / 微小疲労き裂進展特性 |
Research Abstract |
現在、次世代の歯科用金属材料としてチタン合金が期待されている。しかし、チタン合金製品は、その材料の特質上、切削加工費が鉄鋼材料などと比較してかなり高額になる。そこで、チタン合金製品の切削加工コスト低減の手段として、鋳造により当初から材料を完成品に近い形状にできるニアネットシェイプ加工が有効であると考えられる。また、歯科では、鋳造品が極めて多い用いられている。しかし、鋳造により作製された製品では、そのミクロ組織が比較的粗大になり、引巣および偏析が生じる可能性があることから、機械的性質が劣ることが考えられる。そこで、鋳造製品の形状を変化させずに良好な機械的性質を得るためには、熱処理によるミクロ組織の制御が必要であると考えられる。ところで、チタン合金は、水素に対する固溶度が大きく多量の水素を吸収し、また比較的低温において容易に脱水素することが可能である。このことより近年、上記の性質を利用した水素吸脱処理を含む化学熱処理が考案され、チタン合金のミクロ組織の微細化に有効であることが報告されている。しかし、これらの化学熱処理は、主にTi-6Al-4V鋳造あるいは粉末合金についてのものであり、Ti-6Al-7Nb鋳造合金に化学熱処理を施した場合の力学的特性に関して詳細に評価・検討した報告は見当たらない。そこで、本研究では、種々の熱処理を施したTi-6Al-7Nb鋳造合金の疲労特性に及ぼす化学熱処理の影響について評価・検討を行うことを目的としている。 両鋳造合金の化学熱処理材の疲労限は、各受け入れまま材のそれと比較していずれの場合にも約30〜40%向上していた。これは、受け入れまま材では比較的長い疲労き裂がコロニーまたは旧β粒内で発生する針状α組織であるのに対して、両鋳造合金の化学熱処理材ではコロニーおよび旧β粒内における粗大ラス状αの微細化および粒界αの消滅が生じ、微小疲労き裂発生および進展抵抗が向上したためと考えられる。両鋳造合金の受け入れまま材では発生した疲労き裂が徐々に成長しコロニー粒界あるいは旧β粒粒界で停滞した後破断に至るのに対して、両鋳造合金の化学熱処理材では微小疲労き裂発生および進展寿命(2a≦100□m)は、全寿命の約80〜90%であり、両受け入れまま材のそれより2倍程上昇した。これは、ラス状α相の微細化ならびにコロニーおよび旧β粒界が不明瞭化することで、長いすべりの発生抵抗が向上し、微小疲労き裂の発生および進展抵抗を高めるためと考えられる。この結果、化学熱処理を施すことによるラス状α相の微細化は、繰り返し応力下での有効すべり長さを減少させ、すべりを均一化させる効果があるため、受け入れまま材のそれと比較して、著しい疲労強度の向上を示すと考えられる。
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Research Products
(1 results)