2001 Fiscal Year Annual Research Report
栽培植物との自然交雑による野生植物の遺伝的汚染に関する研究
Project/Area Number |
13760001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
秋本 正博 帯広畜産大学, 畜産学部, 助手 (60312443)
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Keywords | 遺伝資源 / 野生イネ / 遺伝的汚染 / 自然交雑 / 集団構造 / 自生地保存 |
Research Abstract |
当初の研究計画では、タイ国内に存在する野生イネ(Oryza rufipogon)集団を対象として調査を行う予定であった。しかしながら、タイ国の野生イネ自生地では、環境破壊があまりに顕著であり研究を遂行するのに十分な数の野生イネ集団を見つけることができなかった。そのため、研究対象を隣国であるラオスの野生イネ自然集団へと変更した。本年度12月にラオスの首都ヴィエンチャン郊外に存在する4つの多年生野生イネ集団と3つの一年生野生イネ集団を訪れ、生態的撹乱状況、および遺伝的汚染の状況について調査を行った。 調査を行ったすべての野生イネ集団の近傍には水田が造成されており、耕作による人的撹乱を受けていた。また、集団に隣接して車道が造られており、粉塵による大気の汚染や自生地の破壊が進行していた。いくつかの集団は野放飼育されている水牛による食害も受けていた。野生イネ集団と水田が隣接している場所では、野生イネと栽培イネとの間に遺伝子流動が生じていると考えられる。一般に、この地域の多年生野生イネは開帳した形態の穂を持つ。しかし、今回調査を行った多年生野生イネ集団の中には、栽培イネに類似した枝梗が閉じた形態の穂を持つ個体が多数存在した。また、野生イネの頴は本来黒紫色をしている。しかしながら、多年生野生イネ、一年生野生イネともに調査を行った集団内には、栽培イネ同様黄褐色の頴を持つ個体が多数存在していた。これらの集団では栽培イネの遺伝子による野生イネの遺伝的汚染が進行しており、野生イネ本来の形質が失われつつあると考えられる。現在、現地調査の際に採集されたサンプルをもとに、DNAマーカーを用いた集団の遺伝構造の解析を行っている。
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