2002 Fiscal Year Annual Research Report
栽培植物との自然交雑による野生植物の遺伝的汚染に関する研究
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13760001
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
秋本 正博 帯広畜産大学, 畜産学部・畜産科学科, 助手 (60312443)
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Keywords | 遺伝資源 / 野生イネ / 遺伝的汚染 / 自然交雑 / 集団構造 / 自生地保存 |
Research Abstract |
ラオスの首都ヴィエンチャン郊外に存在する野生イネ(Oryza rufipogon)の半他殖性多年生生態型の集団4つと自殖性一年生生態型の集団4つについて、構成個体の形態変異や遺伝子型変異をもとに、集団構造の調査を行った。そして、それぞれの自然集団の集団構造に対する、栽培イネとの自然交雑がもたらす遺伝的汚染の影響について解析を行った。なお、多年生生態型、および一年生生態型とも、それぞれ調査を行った4集団のうち1集団は栽培イネの水田から離れて存在し、残る3集団は栽培イネの水田に隣接していた。 水田から離れて存在する集団の野生イネ個体は、頴が黒褐色である、有芒である、脱粒性が高い、胚乳がウルチ性である、などの特徴を持っていた。これに対し、水田に隣接する集団には、上記に同様な野生イネ個体に混じり、頴が黄褐色である、無芒である、脱粒性が低い、胚乳がモチ性である、など栽培イネに類似した特性を持つ個体が多数存在した。SSRマーカーを用いて野生イネの遺伝子型を調べると、水田に隣接する集団には栽培イネと共通の対立遺伝子を持つ個体が多数存在した。これら栽培イネに類似した個体は、栽培イネと野生イネの自然交雑によって生まれた雑種であると考えられる。一年生生態型集団では雑種と思われる個体が集団内に散在していたのに対し、多年生生態型集団では雑種と思われる個体が水田との隣接域に集中して存在した。自殖性の一年生生態型は栽培イネとの自然交雑の機会が少ない。しかし、種子繁殖により毎年世代交代が行われるため、ひとたび交雑が行われると、雑種がすぐに集団に参入し拡散する。一方、半他殖性の多年生生態型は栽培イネとの自然交雑の機会が多い。しかし、世代交代が頻繁でないため、雑種の参入は比較的攪乱が強い水田近傍に限られる。一年生生態型集団と多年生生態型集団では、生活史特性の違いにより遺伝的汚染の影響にも差が生じている。
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Research Products
(1 results)