2001 Fiscal Year Annual Research Report
農山村における各種水域が水生生物の生息場所として果たす機能の研究
Project/Area Number |
13760018
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 和弘 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (60242161)
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Keywords | 谷津田 / 珪藻 / 休耕田 / ため池 / 富栄養化 / 湿原 / 水質 / 種多様性 |
Research Abstract |
栃木県芳賀郡市貝町内の谷津田、休耕田、用水路、ため池、湧水などの各種水域において、付着珪藻類と底生無脊椎動物の採集、および水質調査を行った。同時に、水生生物の生息や水生昆虫が成虫になった後の移動に密接に関連すると予想される、水際の植生についても調査を行った。調査は、平成13年6月および平成14年1〜2月に実施した。 調査の結果、水域の形状に応じて異なった種組成の付着珪藻群集が観察され、珪藻類の種多様性を保全するためには、その生育場所である水域の多様性を保全することが不可欠であることが示唆された。とりわけ休耕田では、いわゆる湿原性の種として認識されているPinnularia属やEunotia属の種類が特徴的に見られ、腐植と適度な水分が安定的に供給される休耕田の環境が、こうした種の生育に適しているものと考えられた。これに対して耕作水田ではEunotia属が見られなくなり、代わってSurirella属やRhopalodia属、Hantzschia属、Bacillaria属の優占度が増大していた。これは、いわゆる土壌性の種にとって水田の環境が適していることを示すものと考えられた。用水路の場合、U字溝化されたものでは、種組成の単調な群集が観察される傾向が認められたが、素堀の水路や湧水起源の自然の流路では、Cymbella属やGomphonema属など、流水環境に適した種を多く含む群集がみられた。 また、大分県杵築市内の19のため池で付着珪藻類の調査を行ったところ、湿原性の種を含む多くの種の生息場所となっていることが確認された。但し、富栄養化や岸の人工化が進んだ一部の池では、種多様性の明らかな減少が認められた。
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