2001 Fiscal Year Annual Research Report
X線結晶構造解析によるゲンジボタルルシフェラーゼの発光色決定機構の解明
Project/Area Number |
13760078
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
市山 進 理化学研究所, 速度論的結晶学研究チーム, 連携研究員 (00333336)
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Keywords | ルシフェラーゼ / 発光色変異 / 酵素-リガンド複合体結晶 / デヒドロルシフェリン / デヒドロルシフェリル-AMP / オキシルシフェリン |
Research Abstract |
ゲンジホタルのルシフェラーゼが触媒する発光反応の構造基盤はこれまで不明であった。また、特定のアミノ酸残基置換により発光色が変化する現象が知られているが、この機構も不明であった。これらの問題の解明のため、酵素-リガンド複合体のX線結晶構造解析に取り組んだ。これまでの実績は次の通りである。1.野生型酵素(黄緑)および燈色変異酵素S286Nに対して大腸菌を用いた大量発現系を構築し、高収量高純度の精製方法を確立した。この際、耐熱化変異T2171を導入して酵素の安定化を図るとともに、必要に応じてN末端3残基欠失変異を導入し、精製酵素の均質性を高めた。2.各酵素について、(1)基質ルシフェリンとATP、(2)デヒドロルシフェリン(基質アナログ)とATP、との各反応後の複合体結晶の調製に成功した。SPring-8においてこれらの回折強度データを収集し、いずれも1.5Å程度の分解能で構造を決定した。そして(1)では生成物オキシルシフェリンとAMPを、(2)ではデヒドロルシフェリンとAMPを、それぞれ捉えることに成功し、各結合部位を同定することができた。本酵素と相同性の高いアメリカ産ホタルのルシフェラーゼ(PpL)の構造決定には先を越されたが、PpLではリガンドとの複合体結晶解析に成功しなかったため、本課題研究により初めて活性中心残基とリガンドとの相互作用の様子を高分解能で捉えることができた。3.質量分析により、デヒドロルシフェリンとATPから中間体アナログであるデヒドロルシフェリル-AMPが一旦は生成することを初めて示した。また本触媒反応過程で生じるピロリン酸やAMPの定量方法を確立し、反応の定量的解析を可能とした。今後、精密化を進めて野生型と橙色変異酵素との構造上の違いを見出し、発光色決定機構を明らかにすることを目指す。
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